東北大学と東北大学ベンチャーパートナーズ(仙台市)は9月24日、東北大学発ベンチャー企業のレナサイエンス(Renascience:東京都中央区)が東京証券取引所マザーズに上場したと発表した。

東北大学ベンチャーパートナーズは、東北大が100%出資して2015年2月に設けたベンチャーキャピタル(VC)であり、そのTHVP-1号投資事業有限責任組合(THVP-1号ファンド)の投資先の1社として、レナサイエンスに投資していた。

レナサイエンスは、東北大大学院 医学系研究科 分子病態治療学分野の宮田敏男教授の研究成果を基に、新薬などを開発している製薬系ベンチャー企業。

特に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による肺炎の重症化を防ぐ治療薬などを開発・事業化している点で注目されている。同社の代表取締役社長は、田辺三菱製薬でバイオ医薬品などの開発に従事した経験を持つ内藤幸嗣氏が務め、宮田敏男教授は取締役会長を務めている。

東北大医学系研究科などは、血栓や炎症・線維化を改善する作用を持つ PAI-1阻害薬「TM5614」はCOVID-19に伴う肺炎の重症化を防ぐ治療薬として有効である可能性が高いと判断し、前期第Ⅱ相医師主導治験を東北大、京都大学、東京医科歯科大学、 東海大学、神戸市立医療センター中央市民病院などの7医療機関で実施し、2021年3月に終了したことを同年4月下旬に公表。

  • 治療薬の見通し

    東北大医学系研究科の張替秀郎教授の研究グループが公表したCOVID-19に伴う肺炎の重症化を防ぐ治療薬の見通し

取材によれば、この成果を基に2021年5月から2022年3月末をめどに国内20医療機関で後期第Ⅱ相医師主導治験を実施中とのことだ。

「TM5614」は東北大とレナサイエンスとの連携で開発が進められている新薬。「経口内服薬(錠剤)のため、外来で処方し、自宅やホテルで療養中の患者にも投与できるという点で期待される薬剤候補で、米国やトルコの大学医療機関でも治験を実施中だという。

  • 国際治験体制

    東北大医学系研究科の張替秀郎教授の研究グループが公表した米国やトルコなどでの国際治験体制