東京大学(東大)は9月17日、極薄(100nm以下)かつ軽量の皮膚貼り付け電極によって、高精度に心電図を1週間にわたって計測することに成功したと発表した。
同成果は、東大大学院 工学系研究科の王燕特任研究員、同・李成薫講師、同・横田知之准教授、同・染谷隆夫教授らの研究チームによるもの。詳細は、米科学雑誌「米科学アカデミー紀要(PNAS)」にオンライン掲載された。
これまで染谷教授を中心とした研究チームは、通気性と伸縮性を両立させることで、皮膚に貼り付けてもかぶれや皮膚アレルギーなどの炎症反応が起きない生体適合材料ベースのナノメッシュセンサなどを開発してきた。今回の研究はその延長線上のもので、薄いジメチルポリシロキサンを数層のポリウレタンナノファイバーで強化することで、100nm以下の厚さながら優れた機械的な耐久性を実現した軽量の皮膚貼り付け電極の開発に成功したという。
1日当たり146kg/m2という高い水蒸気透過性も有することから、皮膚に貼り付けても本来の皮膚呼吸が可能で、汗による炎症反応やむれを起こす心配もないほか、糊や粘着性ゲルなどの粘着剤を用いずに、シートのファンデルワールス力だけで皮膚に貼り付けることができるため、装着した際の皮膚への負荷を、化学的な結合を用いた場合に比べて低減することが可能であり、これにより1週間にわたり、高精度な心電図の計測を可能としたとする。
具体的には、ナノシート自身の重さの7万9000倍以上の重さの液体を支えられることや、繰り返し伸縮(40%・1000回)における機械特性の変化を、3%以下にまで低減されていることなどが確かめられた(初期のヤング率は13.7MPaで、伸縮後は14.1MPa)とするほか、ドライ電極であることから、皮膚の伸縮や日常生活におけるこすりなどに対して高い機械耐久性を有し、貼り付けた直後と1週間後で、どちらもゲル電極と同等の信号を計測できることが確認できたという。
研究チームでは、今回の成果により、日常生活の自然な活動における健康状態を長期間計測することが可能となり、今後、医療・ヘルスケア分野において、病気や体調不良を早期発見するためのウェアラブルデバイスとしての応用が期待されるとしている。