TISは9月17日、豊洲オフィスのショールーム「TIS DIGITAL Innovation Center」にて2021年7月から11月の間、会津若松地域の酒蔵と連携し、遠隔接客体験の実証事業を開催していることを発表した。実証事業では、凸版印刷が提供する高速・大容量ネットワークを介して遠隔体験ができる「IoA 仮想テレポーテーション」を使用し、TIS DIGITAL Innovation Centerと会津若松の酒蔵をつなぐ。

  • 実証事業のイメージ

IoA仮想テレポーテーションは、移動距離・時間を超え、現地の人員やドローンなどのデバイスを使って、自分がそこにいるような感覚で遠隔体験ができるサービスだ。IoA(Internet of Abilities:能力のネットワーク)は、東京大学大学院情報学環 教授の暦本純一氏が提唱する未来社会基盤で、ネットワークを介して人間自身がテクノロジーと繋がることで意識や能力を拡張することを指す。

  • 「IoA 仮想テレポーテーション」の概要

TIS DIGITAL Innovation Centerには、横幅3メートルの大型3面モニターが設置され、会津若松地域の酒蔵からのライブ中継が映像配信される。遠隔接客体験では、映像を介して酒造会社の担当者とインタラクティブなコミュニケーションを行うなど、まるで酒蔵にいるかのような没入感のある体験が可能だ。

  • 酒蔵との遠隔接客体験の様子

実証事業では、現地での接客と変わらない体験ができるのか、商品の購入意欲が高まり実際の購買につながるか、会津若松へ行きたくなったかなどを検証。検証結果を踏まえ、TISは地方と都市部をつなぐ遠隔接客・ライブコマース事業の創出を進める。

8月20日時点で、45名が遠隔接客を体験した。体験後のアンケートでは、参加者のうち6割以上が「対面と変わらない体験ができた」、ほぼすべての体験者が「実際に商品を買いたくなった」と評価している。また、酒造りが行われている会津若松地域の説明を実施していることもあり、「会津に行きたくなった」という意見も多くあり、商品だけでなく地域への興味喚起にもつながっていることがわかった。一方、一時的な画質の劣化や音声の乱れが生じることで、コミュニケーションの質の低下に影響があることも確認されており、通信環境や中継する場所・機材などの改善が必要なこともわかっている。

同社では今後、本実証での最終的な検証結果をもとに、その場で商品の購入・決済まで完結できる機能等、事業化にあたって必要となる機能の検討を進めるとともに、常設でのイベントを実施したい事業者と連携していくことで、地方と都市部をつなぐ遠隔接客・ライブコマース事業の事業創出、ひいては社会課題の解決につなげていくとしている。