WHILLは9月16日、次世代型の電動車椅子である近距離モビリティ「WHILL」について、全国の自動車ディーラー31社430店舗と共に、同製品を活用する取り組みを推進することを発表し、記者会見を開いた。
秋の全国交通安全運動が始まる9月21日をきっかけに、「人生100年時代にも生き続ける不変的なクルマの価値」を各社が表明し、同製品を活用する取り組みを開始する。WHILLとディーラー各社は同製品の試乗機会を増やすほか、高齢者の免許返納を促すことで地域の社会課題解決も目指す。
超高齢化社会などを背景として、2019年度以降の全国の免許返納件数は増加している。その一方で、免許返納を検討していながらも自動車と生活が切り離せない点や、車が好きで運転を続けたいといった点から、なかなか返納に踏み切れずに自動車ディーラーに相談する人も多いのだという。
こうした背景を受けてWHILLは2021年6月から、自動車ディーラー16社と共同で免許返納後の移動手段として「WHILL」を活用する取り組みの第一弾を開始している。具体的には、各ディーラー店舗で製品購入者とその家族を対象に、運転感謝状の授与や実店舗での「WHILL」納車式などを提供している。
こうした取り組みによって同製品の導入が進む一方で、同社のリサーチ調査や各ディーラーへのヒアリングから、少子高齢化への対応や過疎地での交通手段、公共交通機関の不足による移動格差など、さまざまな地域課題が浮き彫りになってきたという。
そこで同社は、免許返納後にも次世代型電動車椅子「WHILL」を新しい移動手段の選択肢として提案し、人生100年時代における、地方を含めたすべてのシニアに快適な移動手段を提供することを狙う。
取り組みの第二弾となる今回は全国のディーラーから31社が参加する。第一弾とは異なり、全国で経営する各ディーラーが、各社なりのクルマの価値を規定した上で主導する「参加型」のプロジェクトとしたことで、これまで以上にそれぞれの地域社会の課題解決に貢献する考えだ。
WHILLの執行役員本部長 池田朋宏氏は記者会見の中で「地方を含めた全国の方にWHILLという快適な移動手段について知ってほしい。今回は、それぞれの地域に密着して顧客との強い関係性を築いているディーラー各社が主導となる参加型の取り組みにしたことで、免許返納後の個人だけでなく、地域社会の課題まで解決できたら」と述べた。
記者会見には、取り組みの第一弾から参加している熊本トヨタ自動車の執行役員 営業副本部長 中川大氏も参加した。同社のビジョンである「熊本を走るすべての人に、一人ひとりの幸せをお届けします。」を達成するためのソリューションとして同製品に着目したという。今回の取り組みで同社は、モニター試乗機の貸し出しや県内施設でのデモに取り組むことで、利用者の増加を目指す。
中川氏は会見で「県内で少しでも多くの方に利用してもらって、その周りの方にもWHILLという選択肢があることを認識していただき、新しい移動手段の認知を広げることが我々の使命だと思っている。第一弾から参加しているが、全国には同じように考えている他のディーラーがたくさんいることがわかったので、引き続き自信をもって取り組んでいきたい」と、間もなく始まる第二弾への意気込みを語った。
第二弾から新たに取り組みに参加するディーラーを代表して、ホンダ自販タナカ(ホンダカーズ富山)から、代表取締役社長 浅生忠和氏が会見に参加した。富山県では高齢者の事故が増加したことから免許を返納する高齢者が多く、それまで同社が築いてきた顧客との関係性が途切れてしまうことを課題に感じていたという。
また、県内には人口密度が低い地域が多いため公共交通網が十分ではない地域が多く、免許返納後の交通手段に不安が残る中で、顧客の役に立てない点も解決したかったとのことだ。そこで、WHILLの機体の品質や会社のこだわりに納得し、取り扱いの開始に至ったとのことだ。
浅生氏は「富山県には自然環境を愛している方が多く、県民の環境意識が高いと感じる。コンパクトシティやスマートシティの取り組みとしても有効であろう。多くの方にWHILLを知っていただき、体験していただくことで新時代のモビリティを推進するとともに、免許返納者への移動手段の提案に取り組んでいく」と話した。