ソフトバンクの法人向けイベント「SoftBank World 2021」が9月15日に開幕した(9月17日まで開催)。今回で第10回目となる同イベントは、昨年に引き続き完全オンライン形式で開催された。テーマは「DXの今を知る。明日のビジョンが見えてくる。」。同日の基調講演のトップバッターとして登場したのは、ソフトバンクグループ取締役会長 兼 社長執行役員の孫正義氏だ。

  • ソフトバンクグループ取締役会長 兼 社長執行役員 孫正義氏

孫氏は「日本復活の鍵は『スマボ』」と、AI(人工知能)の技術を取り入れたロボット「スマボ」の可能性を力説した。スマボというのは孫氏の造語で、「スマートロボット」を意味する。2010年第に「ガラケー」(ガラパゴス携帯)から「スマホ」(スマートフォン)に変わったことで人々の生活が一変したように、「ガラボ」から「スマボ」に代わることで、ロボットの在り方が変わると語った。

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  • 日本復活の鍵は「スマボ」?

孫氏は、「Japan as No.1」と言われていた1980年代に比べ、日本の競争力が低迷したことに危機感を覚えたという。競争力を「労働人口×生産性」と捉え、「スマボ」で労働人口を補うことで、日本の競争力を取り戻せると断言した。

  • 日本の競争力は低迷している

  • 孫氏「競争力=労働人口×生産性」

「ロボットは、24時間365日と人間の3倍の労働が可能で、AIの活用により生産性も人間の3倍になり、掛け合わせると生産性は1台のスマボで10倍になる。スマボを日本に1億台導入することで10億人の労働人口を確保できることになる」と、孫氏はスマボが日本の競争力の底上げすると説明した。

  • スマボで労働人口と生産性を補い競争力を底上げする

具体的に、スマボとは、AI技術を用いてロボット自体が学習し、人間がプログラミングをする必要がなく臨機応変に対応するロボットを指す。人間が指示したプログラムにしか反応しない従来型ロボットとは対照的だ。

  • ガラボとスマボの違い

ソフトバンクグループは現在、最先端技術となるAIを活用している300の企業に出資しており、スマボの分野に関してもソフトバンクロボティクスや、バク宙する2足歩行ロボット「アトラス」を開発したことで先日話題となった米ボストン・ダイナミクスなど、計18の企業に出資している。

  • ソフトバンクグループは18のガラボ企業に出資

  • 米ボストン・ダイナミクスが開発したバク宙する2足歩行ロボット「アトラス」

「孫正義は、お金を生み出す投資家ではなく、未来を生み出す資本家だ。ソフトバンクグループは、世界最先端のスマボ企業集団になった。自動運転、手術、清掃、倉庫、何から何までやっている」(孫氏)

講演では、出資している企業の人型ロボットのほか、医療、物流、清掃、飲食店の配膳向けにAIを活用したロボットを紹介。一部抜粋すると、例えば中国企業のAGILE ROBOTは衝突を検知できるロボットアームを開発している。鋭い先端に風船を当ててもそれを検知し、風船を割ることなく停止できる。

  • AGILE ROBOTの衝突を検知できるロボットアーム

また孫氏は、「メタルカラーでなく『透明カラー』のスマボもある」として、RPAを提供する米Automation Anywhereもスマボ企業に該当すると語った。

  • 米Automation AnywherenのRPAサービス。孫氏「RPAサービスの企業もスマボ企業だ」

最後に孫氏は、「今後もソフトバンクグループは資本家として、最先端AIによる情報革命を生み出す企業を応援する。諦める必要はなく、やりたい、叶えたい気持ちがあれば必ず道は開けるはずだ。日本を全力で応援し、明るい未来が来ることを心から願っている」と語り、講演を締めくくった。