NECは9月15日、2025 中期経営計画で掲げた「次の柱となる成長事業の創造」の一環として、AI などのデジタル技術を活用したヘルスケア・ライフサイエンス事業に注力し、2030年に事業価値5,000億円を目指すと発表した。
NECの顔認証技術をはじめとする生体認証「Bio-IDiom」や、NECが強みをもつ映像分析技術、グラフベース関係性学習などの最先端AI技術群「NEC the WISE」を活かし、必要な医療をデジタルで支える「Medical Care事業」、一人ひとりの日常生活に寄り添う「Lifestyle Support 事業」、個人に合わせた医療を技術で支える「Life Science 事業」の3つの領域に注力する。
Medical Careでは、必要な医療をデジタルで支え、いつでも診療を受けられる(遠隔診断など)、どこにいても専門性の高い治療を受けられる(都市ではなくても地方でも)、AIを活用した高度な医療機器を利用できる(例えば、AIを活用したカプセルチップによる診断など)、人とロボットが協調し、寄り添うといったことを実現するという。
Lifestyle Supportでは、一人ひとりの日常生活に寄り添うことを目指し、スムーズで負担なく健康を管理できる(普段の生活から自分の状態がわかる)、自分に最も合う高水準なリハビリが受けられる(ロボットが寄り添う楽しいリハビリなど)、自分に一番適した義肢を着けられる(AIを介在)、万一の時(交通事故などでも)も自分の意思が正しく伝わることを実現する。
Life Scienceでは、個人に合わせた医療を科学で支えるを目指し、少ない負担で疾病リスクが予測できる、自分の状態に合う治療が受けられる(ゲノムデータの活用)、安全なデータ管理により安心できる、効果的な治療法が早期に開発されるといったことを実現するという。
NECでは、すでに各領域に製品やサービスを提供している。
Medical Careでは、電子カルテや内視鏡AI、Lifestyle Supportでは、インソール(インソールに内蔵した歩行分析センサによる歩行状態見える化)やカラダケア(専門家の理学療法士が、身体の不調の根本原因を紐解き、正しい体の動かし方が自然に身につくように導くサービス)、Life Scienceでは、AI創薬やFonesLife(少量の血中タンパク質から健康状態・疾病リスクを可視化)などだ。
同社では2030年に向け、これらを強いコア事業に育て、それを周辺事業へ拡大することで売上を伸ばすことを考えている。
そのために、医療機関、介護・リハビリ、創薬などの利用シーンに合わせ、2030年を見据えた研究開発を事業と共に進めていくとともに、へルスケア・ライフサイエンス PMO(Project Management Office)を立ち上げ、NECグループ横断でプロジェクトポートフォリオ管理、各事業の事業価値向上支援などを行っていく。
NEC コーポレート・エグゼクティブ 北瀬聖光氏は、新規事業に取り組むを理由を、「企業では事業の衰退時期がやってくるが、自己革新を繰り返す企業は生き残っていける。企業は、新規事業にチャレンジし続けることが重要だ」と語り、新規事業領域としてヘルスケアを選んだ理由としては、COVID-19、糖尿病、がんなどを代表にインパクトの大きい社会課題である点と、今後市場が拡大していく領域(経済産業省の予想で、国内のヘルスケア市場は2016年の25兆円から2025年に33兆円になると予測)である点を挙げた。
また、同氏はこのビジネスを進める上の課題として、AIが本当に効果を発揮できるのか、競争が激しい領域なので、NECが本当の価値を提供できるかという点を挙げた。