レノボは9月8日、「LenovoTechWorld 2021」と題するオンラインイベントを開催。基調講演では、同社のCEO 楊元慶(ヤン・ユワンチン)氏と米Microsoftのサティア・ナデラCEOとの対談が行われた。

働く場所はハイブリッド型が継続する

楊氏はまず、今から40年前の「次なるリアリティ」はどのようなものだったのかを振り返り、「当時、未来を予測した者たちが、今の状況が見えていたことに驚くばかり」だと感嘆した。

  • レノボの楊CEO

その上で、現代を生きる我々の役目は、「技術・仕事・社会の次なるリアリティを改めて想像して定義して、形にしていくことなのです」と指摘する。現代の次なるリアリティに関して楊氏は、「さまざまことを可能にするデジタル改革の大きな可能性を感じています」と語る。

  • テクノロジーがハイブリッド勤務をつなぐ

将来の勤務場所は会社や自宅とのハイブリッド型になっていくと予測する同氏は、「個人のライフスタイルと組織文化の構造変化は、永続的だ」との見通しを示した。

需要が高まるハイブリッド・クラウド

同氏はハイブリッドの世界では、ユーザー個々が接続性や同期性の向上のため複数のデバイスを必要だとし、「家庭でのデータ使用量の増加に対応し、またデータプライバシーの保護も確実に行っていかなければなりません」と語った。

そこで同氏は、同社の「Project Unity」に触れた。

これを含む同社のスマート・コラボレーション・ソリューションはハイブリッドな仕事環境を実現するもので、「オンサイトとリモート参加者の間で、さまざまなデバイスやいろいろな場所から、スムーズな接続を可能にします」と述べた。

また、企業向けのソリューションを紹介し、「エッジとオンプレミス、データセンターとクラウドの組み合わせであり続けるでしょう」と予測を示した楊氏は、同イベントで紹介する同社のハイブリッド・クラウド・ソリューションに触れた。

  • クラウドのトレンドもハイブリッド型へ

データ通信量の爆発的増加はエッジ・コンピューティングで解決

クラウドの需要が高まる一方で、「爆発的な量のデータ通信が行われており、データ通信の渋滞や遅延が避けられません」と懸念を示した楊氏は、エッジ・コンピューティングがその解決策になると述べた。

そしてこのイベントでは、同社エッジ製品のフルラインナップを紹介した。

「信頼性と安全性、5G対応、そしてエッジでのコンピュータ能力と機械学習能力を備えています」ろ楊氏はアピールする。

  • レノボのエッジ製品群

AIプラットフォーム「Lenovo Brain」が重要なレイヤー

楊氏はクライアント用デバイスとインフラ・ソリューションに加えて、AI(人工知能)が重要なレイヤーだとした。

同社CTOのヨン・ルイ氏が紹介する同社のAIプラットフォーム「Lenovo Brain」は、自然言語処理、知識、グラフや、学習・推論機能などを網羅すると楊氏は語った。

  • AIプラットフォーム「Lenovo Brain」

ハード/ソフト/サービスをAs a Serviceで

楊氏は今後、仕事と生活のハイブリッド型のソリューションが定着し、多様なデバイス、IoT、オンラインのアプリケーションが誕生すると予測し、「エッジ、クラウド、オンプレミスのデータセンター・コンピューティングが利用されることで、より洗練されたインフラが生まれてくるでしょう」との見通しを示した。

今後、アーキテクチャの設計・導入・運用がより複雑化していき、顧客は、よりシンプルで簡単に使えるITを求めていくという。

  • あらゆるモノをAs a Serviceで提供

そして、楊氏が「本日の一番重要な発表です」と前置きして紹介したのが、「Lenovo TruScale」だ。

これは、同社のハード/ソフト/サービスをAs a Serviceとして購入可能な、サブスクション・ベースのオール・イン・ワン・モデルとなる。

  • 「Lenovo TruScale」はサブスクション・ベースのオール・イン・ワン・モデル

次なるリアリティでは、すべてのビジネスはデジタルになり、すべてての製品はAs a Serviceとして提供され、「当社からのソリューション型のサービスの購入は、PC購入と同じぐらい簡単になります」(楊氏)と述べた。

そして楊氏は、「当社は一丸となって、ポケット型の端末からクラウドによる多様なビジネス・ラインで、お客様のお手伝いをすることにコミットします。カスタマーサポートのプラットフォームも一元化します」とした上で、それにはパートナー企業のサポートが不可欠だと語った。

講演の締めくくりは楊氏とMSナデラCEOの対談

パートナー企業各社のCEOなどからのメッセージに続いて、セッションは楊氏と米Microsoftのサティア・ナデラCEOとの対談に移る。

楊氏から「次なるリアリティでは、どういった流れが一番大事だと思いますか?」と問われたナデラ氏は、「世界は今、大きな技術リノベーションの過渡期にあると思います。中でも一番急速な変革を遂げているのが、我々の働き方ではないでしょうか」と回答した。

  • 米MicrosoftのナデラCEO

ナデラ氏は、ハイブリッド・ワークには、社員たちは柔軟な働き方を望むと同時に、より多くの対面でのコラボレーションを望むというパラドックスを指摘する。そして、そこには、標準が存在しないという。

「さまざまな人が参加できるように、スペースの再設計も必要」と指摘するナデラ氏は、「レノボとMicrosoft TeamsのRoomやデバイスとのパートナーシップは大切です」と語る。同氏は「黎明期ではありますが、今後社員が職場に戻るにつれて、多くの調整・学びが行われるでしょう」との見通しを示した。

  • ナデラ氏と楊氏

ユーザーの成功に向けた両社の連携の緊密化には何が必要かという楊氏の問いに対して、ナデラ氏はPC、クラウドとエッジ、As a Serviceの3点を挙げた。

「Windows 11に非常に期待しています。Windowsは世界的な創造のプラットフォームであり、プラットフォーム・クリエイターのためのプラットフォームなのです」(ナデラ氏)

クラウドとエッジに関しては、「Azure Percept」をレノボのエッジ・ラインナップに加えるべく進展していることに、ナデラ氏は期待を寄せる。

レノボの取り組みに関し、「ハイブリッド・クラウドをAs a Serviceとして提供しておられることは、素晴らしいと思います」と評価するナデラ氏は、「統合されたエンド・トゥ・エンドのAzure Stack HCIシステムの構築で、データセンター・サブスクリプションに対して単一の課金モデルを提供しており、お客様の成功を支援するレノボとの提携において、私が楽しみにしている重要な分野です」と語った。

楊氏は最後に、Microsoftとのコラボレーションを今後も楽しみにしており、両社のビジョンは合致しているとした上で、「今後も、スマーター・テクノロジーとソリューションを世界中に提供するために、パートナーとしてサポートし合っていきましょう」と対談を締めくくった。