東京大学(東大)は9月13日、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の「デルタ株(B.1.617.2系統)」のウイルス学的および免疫学的特性を明らかにし、ワクチン接種で獲得された中和抗体に対して、従来株よりも6~8倍の抵抗性を確認したことなどを発表した。
同成果は、東大 医科学研究所 附属感染症国際研究センター システムウイルス学分野の佐藤佳准教授、佐藤准教授が主催する研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」に参加している広島大学大学院 医系科学研究科の入江崇准教授、東京都 健康安全研究センターの吉田勲研究員のほか、英国やインドの研究者たちも参加した国際共同研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」にオンライン掲載された。
2021年9月14日時点で日本で流行している新型コロナがデルタ株(B.1.617.2系統)だが、今回、研究チームが細胞実験を実施したところ、このデルタ株は従来株と比較して、ワクチン接種者から回収された血清中の中和抗体に対する感受性が、1/6~1/8と低いことが判明したという。これは、ワクチン接種で獲得された中和抗体に対して、従来株と比べ6~8倍ほど高い抵抗性を示すということを意味することとなるという。
またデルタ株は、アルファ株やカッパー株と比べて、「ヒト気道オルガノイド」と「ヒト気道上皮系」の両方で、高い複製効率が示されたともしているほか、複数の系統のウイルスが混合して循環している期間中における、インドの3つの医療センターで新型コロナ感染医療に従事している130人以上を対象に分析が行われた結果、ワクチン接種者が新型コロナに感染してしまう「ブレイクスルー感染」を複数回引き起こしていることも判明したという。
このほか、ほかの変異株と比較して、デルタ株に対してアストラゼネカの「ChAdOx-1ワクチン」の有効性が低下していることも観察されたともしており、比較的高い免疫回避能力と高い複製力を有するデルタ株は、ワクチン接種後の時代における、継続的な感染管理の重要性を示唆するものだと研究チームではコメントしている。