Uber Japanは9月9日、オンラインカンファレンス「MaaSが変えるモビリティの未来」を開催した。イベントの第2部では、同社やWILLERなどの第1部の参加者に加えて、東京大学で交通計画や交通政策の研究に取り組む加藤教授がパネルディスカッションに参加した。

イベント第1部の様子は≪こちら≫

同ディスカッションは、Uber Japan政府校外・公共政策部長 西村健吾氏がモデレーターを務めた。参加したパネリストは以下の5名。

  • 日本航空 デジタルイノベーション本部 事業創造戦略部 MaaSグループ グループ長 清水俊弥氏
  • WILLER 代表取締役 村瀬茂高氏
  • 国道交通省 総合政策局モビリティサービス推進課 課長補佐 石川雄基氏
  • Uber Japan モビリティ事業 ゼネラルマネージャー 山中志郎氏
  • 東京大学大学院 工学系研究科 加藤浩徳教授- -
  • パネルディスカッションの様子

--5年後、10年後の日本のMaaSの将来像は?

清水氏「移動手段の検索から予約、決済、当日の利用までがシームレスにつながったサービスは5年後には存在すると思います。バスや電車などの既存の交通手段だけではなく、電動キックボードなどの新しいモビリティも現れるのではないでしょうか。10年後には、空飛ぶクルマなど新技術の実装もできていると思います」

  • 日本航空 デジタルイノベーション本部 事業創造戦略部 MaaSグループ グループ長 清水俊弥氏

村瀬氏「5年後にはコロナ禍が収束したニューノーマルな時代となるでしょう。既存の交通手段に加えて新しいモビリティが出現することで、都市部では移動の効率化によって生活の豊かさが向上すると思います。地方では、マイカーに依存せずともマイカーと同程度の利便性を持つ交通手段を実現するモデルが徐々にできあがってくるのではないでしょうか」

石川氏「将来像として、自家用車のみに頼るのではない移動の実現を描いています。そのためにも、公共交通機関を含めた移動手段がサステナブルであるべきです。現在は自動運転などの技術の進歩が著しいですよね。今は思いつかないような新たな技術の社会実装を、10年後に振り返るのが楽しみです」

山中氏「運転事業のドライバー高齢化や公共交通機関の収益性など、交通事業に関わる問題が、今後5年間でさらに顕著化してくると思います。これら諸問題の解決の糸口として、サブスクリプションやダイナミックプライシングなど、これまでと異なる料金体系も視野に入れて、企業間および官民間での連携をより強固にしていきたいです」

加藤氏「今後5年間は、地方での公共交通の衰退など、既に存在する課題の解決に向けた議論が主にならざるを得ないでしょう。また、10年後はカーボンニュートラルの実現に向けた動きが本格化してくると思われます。エネルギー革命を見据えた都市DX(デジタルトランスフォーメーション)や、交通全体を支えるマネジメントプラットフォームとしてのMaaSの実現に期待しています」

--それらの将来像を実現する際の課題は?

清水氏「現在はスピード感を持ってさまざまなことにチャレンジする段階ですが、将来的にはデータフォーマットなどをまとめていく必要があります。将来的にどのような未来を実現するのかを見据えて、着地点を模索していかなければなりません」

村瀬氏「よく、MaaSはもうかるのかという議論になります。私は、MaaSは社会全体の課題を解決するための手段だと思っていて、それを達成した際には事業者に相応の利益が入ってくる仕組みづくりが大事だと思います。また、MaaSの実現は特定の1社だけでは難しいです。どれだけ多くの事業者が一体となって取り組んでいくのかが大切です」

石川氏「移動手段は社会生活を支える重要な基盤です。今後の公共交通機関の存続性に対する危機感や高度化の必要性を、いかに共通認識として作っていくのかが課題だと思います。共通認識を作り上げた上で、人口減少や経済状況などのさまざまな課題に対してどのような優先順位で取り組むのかを議論していかなければならないと思います」

山中氏「何が今後のベストな進め方なのかを考える必要があると思います。完全に自由な市場にするのか、あるいは1つのルールの中で競争するのかなど、多様な意見を収集することで統一見解や共通認識を作り上げていく過程が必要です」

加藤氏「何よりも、利用者の目線に立った交通サービスの提供が大事ですよね。移動する人から見ると、事業者にかかわらず目的地までの移動は数珠つなぎの行動です。利用者にとって本当に便利なMaaSを提供するために、特定の事業社が保有するデータをどの程度オープンなものにしていくのか、関係者同士が合意形成する地道な努力が大切です」

  • 東京大学大学院 工学系研究科 加藤浩徳教授