ネットワンシステムズは9月9日、事業戦略説明会を開催した。説明会では、今年4月に代表取締役社長に就任した竹下隆史氏が新経営体制における事業戦略を説明し、執行役員の篠浦文彦氏が顧客企業のICTライフサイクル全体を支える取り組み「統合サービス事業」を紹介した。

FY21は顧客企業のグループ全体に向けた提案を推進

竹下氏は冒頭、同社の元従業員が不正取引を起こしたことに言及し、刷新した経営体制の下で、内部統制を強化するともに、企業文化の改善に取り組み、信頼の回復に努めると厳しい面持ちで述べた。

  • ネットワンシステムズ 代表取締役社長 竹下隆史氏

竹下氏は、事業戦略の要として、2019年-2021年「中期事業計画」を紹介した。同社の中期事業計画は「注力市場・新モデルの拡大」「統合サービスモデルの加速」「働き方改革2.0/DX の実践」という3つの基本戦略の下、「社員」「顧客・パートナー」「会社」の3者の成長を目指している。

  • ネットワンシステムズの中期事業計画

竹下氏は、FY21のトピックとして、顧客企業グループ全体を意識した提案に注力していることを挙げた。コロナ禍においては、市場のとらえ方も変化しており、パートナービジネスが活発になり、これまで直接コンタクトできなかった企業に対してもビジネスを展開できるようになったという。

  • FY21は顧客企業のグループ全体に向けた提案を推進する

次期中期事業計画策定に向けては、「重要課題を踏まえ、技術やソリューションを通して、顧客の課題解決、ひいてはそれが社会の課題解決につなげる」と、竹下氏は述べた。財務戦略としては 最適な経営資源を活用するために「株主への還元」「社員への還元」「社会への貢献」に取り組む。竹下氏は、次期中期事業計画のポイントとして、人財育成を挙げ、「すべての社員がソリューションの目利きができる匠であるべきと考えている。そして、目利きしたソリューションによって、顧客の課題を解決していく」と説明した。

  • 次期中期事業計画策定に向けた方針

すべての事業活動を「統合サービス事業」に集約

続いて、篠浦氏が、同社の核のビジネスとなる「統合サービス事業」について説明した。「統合サービス事業」は、Plan(計画、提案)のコンサルティングから入り、Build(設計、構築)、Operation(運用、保守)、Optimization(最適化)を通じて、顧客Tライフサイクル全体を支える取り組みとなる。

  • ネットワンシステムズ 執行役員 篠浦文彦氏

篠浦氏は、統合サービス事業を立ち上げた背景や現状について、次のように語った。

「これまでの事業活動は、ネットワークインフラの構築が中心であり、案件単位でのビジネスだった。そこで、ネットワンの優位性をサービスとして提供していくため、事業活動をすべて統合サービス事業とした。統合サービス事業では、ユニークな資材を再認識するとともに、どう活用するかを考えていく。また、カスタマーエンゲージメントと営業活動を統合する。システムをOPEX型として提供できるビジネスモデルに転換し、顧客のグループ会社を含めてサポートできる体制に変化してきた。今では、エコシステムが形成されるまでになっている」

  • ネットワンシステムズのビジネスモデルの変遷。統合サービス事業では、顧客との長期的リレーションを実現するビジネスモデルを実践する

統合サービス事業の成長戦略においては、「価値相互波及力の向上」「デジタル時代のエンゲージメントモデル」「ライフサイクルサービスの高度化」「サービスプラットフォームの進化」「デジタル化に向けた人財、プロセス、システム変革」がカギとなる。顧客からのフィードバックを迅速に反映できる仕組みをつくるとともに、人材の育成や文化の醸成に取り組むことで、社内のデジタル化も進めていくという。

  • 統合サービス事業の成長戦略

カスタマーサクセスに関しては、顧客のライフサイクルとビジネスアプローチの同期をさせることで取り組んでいく。具体的には、顧客と双方向のコミュニケーション、DX(デジタルトランスフォーメーション)のライフサイクルへの適用を実現できるよう、組織、アクテビティを最適化し、顧客との関係をより戦略的、継続的にしていく。

加えて、篠浦氏は「DXイネーブラーとしての役割を果たせるように、プラットフォームを進化させていく」と述べた。同社はネットワーク分野での経験が豊富であり、実績もある。このプラットフォームは「netone Elastic インフラストラクチャー」と定義されている。同プラットフォームは「自律化されたITインフラ」「クラウド利活用に最適なアーキテクチャ」「ワンストップサービス」から構成され、「顧客をベンダーやクラウドのロックインから解放するアーキテクチャ」(篠浦氏)となる。

「netone Elastic インフラストラクチャー」は現在、フェーズ1の段階にある。篠浦氏によると、これまで培ってきたネットワーク技術をベースに、ユースケースやテンプレートの整備を急ピッチで行っているという。実環境を想定してPoCをユーザーと共同で行い、経験値を積んでいくことに取り組んでいる。

フェーズ1では、「netone Lab As A Service (LAAS)」が活用される。LAASでは、顧客との共同検証専用の環境として、オンプレミスとアマゾンウェブサービス(AWS)やMicrosoft Azureなどのパブリッククラウドサービスを接続したマルチクラウド環境を用意している。篠浦氏は、LAASについて、「顧客向けのエンゲージメントエンジンであると同時に、生産性向上に貢献している。LAASにより、知財蓄積や再利用が急速に進んでおり、100社以上の顧客が利用している」と説明した。

そして、篠浦氏は今後の展望について、「アフターコロナを見据えると、ハイブリッドな働き方が効率的。よって、ハイブリッドな働き方のためのオフィスの整備を進めている。品川オフィスに、デジタルとリアルによって価値を創出する『netone valley』を設立した。組織、ビジネスプロセスのトランスフォーメーションを進めていくとともに、顧客のDX推進に提供できるユニークな価値を追求する」と述べた。