アットマークテクノは9月9日、同社の産業用途向けIoTゲートウェイ「Armadillo-IoTシリーズ」の最新版として、AIやML(機械学習)に対応するエッジAI処理向けIoTゲートウェイ「Armadillo-IoTゲートウェイG4(Armadillo-IoT G4)」を発表した。

Armadillo-IoT G4は、エッジでのAI活用に期待が集まるようになってきた産業界からのニーズを受けて、真に現場で使えるIoTゲートウェイを目指して開発されたモデル。これまで手掛けてきたIoTゲートウェイに対する開発ノウハウ、ならびに実際に現場でそれらを活用してきたユーザーからのフィードバックなどを踏まえ、「IoT時代に対応するコンパクトかつセキュアなOSで、きっちりとした運用をしつつ、悩まずに使えるようにすることを目指した」と同社 代表取締役の實吉智裕氏は開発の経緯を説明する。

その最大の特徴となるのがOSで、これまではLinuxの汎用ディストリビューションであるDebian/GNU Linuxが採用されてきたが、汎用ディストリビューションであるが故に、PC/サーバ向けの使い勝手は向上してきたが、メジャーサポート期間の問題や、ディストリビューションのイメージがPCなどに比べて必ずしも多くない組込機器のストレージ容量を圧迫してしまうなど、必ずしも組込機器向けの使い勝手向上につながってきたわけではないという課題を抱えていた。そこで、G4からは新たにAlpine LinuxをベースにOSサイズの小型化を図り、長期的なメンテナンスを可能としつつ、Docker互換のコンテナエンジン「podman」を採用することで、ユーザーアプリケーションをコンテナごとに切り分けることで、脆弱性を限定化するなどの工夫を施した「Armadillo Base OS」を開発。これを搭載することで、堅牢性と利便性を確保しつつ、長期的な運用も可能としたという。

  • Armadillo-IoT G4
  • Armadillo-IoT G4
  • 「Armadillo-IoT G4」に搭載される「Armadillo Base OS」の構成イメージ

コンテナベースでのアプリケーション運用という形式としたことで、アプリ開発者はディストリビューションとライブラリを自由に選択することができるようになり、これまで以上にさまざまなライブラリのバージョンが異なる複数のアプリを実行することが可能となる。また、OS部分、ブートローダー部分、コンテナ部分に対して、それぞれアップデートする仕組みを標準で用意。従来型のローカルでのUSBメモリやSDカードを使ってのアップデートのほか、ネットワークを活用した手法も用意。ネットワーク経由の場合、標準でクラウドサーバとの通信のためのセキュアエレメントを搭載しているため、それを活用する形でWebサーバを用いるほか、eclipse harkBitプロジェクトの成果物を利用した高機能なアップデートサーバも用意される予定だという。

  • Armadillo-IoT G4

    アップデート実施の際のストレージ構成イメージ

また、ハードウェアとしても、現場におけるさまざまなユースケースに対応することを目的に、NXP SemiconductorsのNPU搭載アプリケーションプロセッサ「i.MX 8M Plus」を採用。Arm Cortex-A53×4コア(1.6GHz動作)のほか、演算性能2.3TOPSのNPUやISPなどを搭載しており、NPUで演算支援できるAIフレームワークはTensorFlow Lite/ArmNNとしている。

  • Armadillo-IoT G4
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  • Armadillo-IoT G4のハードウェア仕様とi.MX 8M Plusに搭載されているNPUの対応ML Stack

さらに、今回のシリーズ第1弾となるLANモデル開発セット「AGX4500-C00D0」では、筐体入りモデル「AGX4500-C00Z」のほか、筐体無しモデル「AGX4500-U00Z」も用意。筐体無しモデルの場合、外部インタフェースとして、Gigabit Ethernet×2、USB3.0、HDMI2.0aといった筐体入りモデルでも利用可能な各種に加え、基板上に配置されているMIPI-CSIカメラインタフェース、LVDS出力、GPIO/I2C/SPIなどの組込機器で一般的に利用されるインタフェースも利用することが可能となっている。

  • Armadillo-IoT G4
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  • 筐体入りモデルと筐体無しモデルを用意。筐体無しモデルでは、基板上の各種インタフェースを利用することも可能だという

筐体入りモデルについては筐体からの放熱を重視した仕様とすることで、ファンレス化を実現している。LANモデル開発セットの価格は4万9500円(構成品は本体とACアダプタ)で、2021年11月末ころの発売を予定しているとするほか、2022年1月ころに量産モデルの提供開始を予定している(30台以上でボリュームディスカウントを予定)。また、将来的には、LTEや5Gを搭載したモデルなどの提供も行っていく予定としている。

  • Armadillo-IoT G4

    アドオンで通信モジュールを搭載することなども可能であり、今後、各種の通信モジュールやインタフェース搭載モジュールを追加したバージョンの提供も進めていく予定としている

なお、同社はこれまでもArmadilloシリーズの新製品を発売するタイミングで、既存のArmadilloユーザーに向けた割引キャンペーンなどを実施してきており、今回のArmadillo-IoT G4の発売に際しても、實吉氏は「まだ細かく決めていないが、何かしらのキャンペーンを実施したいと思っている」と、実施を前向きに検討していることを明らかにしている。