沖縄科学技術大学院大学(OIST)は9月6日、小惑星探査機「はやぶさ2」が探査した小惑星「リュウグウ」と、NASAの小惑星探査機「オシリス・レックス」が探査した小惑星「ベンヌ」はどちらも特徴的なダイヤモンド形をしているが、砂や砂糖などの粒状体の流れを説明するために設計された単純な粒状体の物理モデルを用いて、その形状に至った理由を解明したことを発表した。
同成果は、OIST 流体力学ユニットのタパン・サブワラ博士(グループリーダー兼任)、同・ピナキ・チャクラボルティ教授、米・ラトガース大学のトロイ・シンブロット教授らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、粒状材料の基礎科学と工学の幅広い分野を扱う学術誌「Granular Matter」に掲載された。
小惑星「リュウグウ」や「ベンヌ」は、探査機が現地まで行った結果、その形状がダイヤモンド形であることが判明し、話題となった。
これまで、こうしたダイヤモンド形に小惑星がなった理由としては、自転による力の作用で、物質が両極から赤道に向かって移動したためと考えられていたという。しかし、研究チームが、そのようなモデルを使ってシミュレーションを行っても、小惑星はダイヤモンド形にはならず、平らだったり、非対称になり、結果が一致しなかったことから、今回、モデルの詳細検討を実施。その結果、物質の堆積という重要な要素が欠けていることを発見し、砂や砂糖のような粒状体の堆積に通常使われている単純な力学モデルを用いて、ダイヤモンド形をシミュレーションすることに成功したという。
漏斗に砂や砂糖を入れると、地球上では真っ直ぐ落ちてきれいな円錐形の山ができあがるが、リュウグウやベンヌはラブルパイル天体であり、ランダムなサイズの岩塊の集合体であるため、必ずしも地球のように中心に向かって真っ直ぐに重力が働くとは限らないという。
しかも重力が小さく、また小惑星の両極付近では、自転によって起こる遠心力が小さいため、そこに物質が蓄積されて独特の隆起した形状になり、最終的にダイヤモンド形になったと考えられるという。
今回開発されたモデルによってわかったのは、これらのラブルパイル小惑星が球体からダイヤモンド形に変形したのではなく、小惑星の形成初期に破片が蓄積することによってダイヤモンド形が形成され、その後の再形成は最小限のものであったと考えられると研究チームでは説明する。ダイヤモンド形が小惑星形成の初期段階で形成されたという考え方は、既存のモデルとは異なるが、最近の観測結果とは一致しているという。
なお、流体力学ユニットを率いるチャクラボルティ教授は、「粒状体の流れという単純な概念を用いて、これらの小惑星がどのようにして不思議な形になったのかを説明しました。単純な概念で複雑な問題を解明することができたことが、私たちにとってこの研究の最も優れた点といえます」とコメントしている。