パナソニックとスマートドライブは9月7日、物流車両を利用する企業向けに、運行管理の実証サービス「ETC2.0 Fleetサービス」を開始すると発表し、記者向けに説明会を開いた。
ETC2.0はこれまではITSスポットサービスとも呼ばれており、従来のETCが持っていた決済機能に加えて、車両の位置データや経路情報、急ブレーキによる減速などの情報が取得できる機能を持つ。これらの情報は国道交通省が管理し、交通安全や渋滞対策などに利用されている。
さらに国土交通省は、ETC2.0データの民間連携による活用に着手しており、情報収集の充実や新たなサービスの創出を目指している。こうした背景を受けて両社は、信頼性の高い国のインフラを活用した運送事業者向けシステムの共同開発を開始したとのことだ。
同サービスは、ETC2.0車載器を搭載した乗用車の経路情報や急ブレーキを把握する機能と、高速道路および直轄国道に約4100基ある路側機を連携させた情報をもとにして提供される。車の稼働状況や業務状況、走行履歴が可視化されることに加えて、複数の車両を管理可能なため、配車の最適化を図ることができる。
運行管理業務をデジタル化することで、保有車両の台数や形態が適切なのかを見極めることにもつながり、保有車両台数の削減などによる業務効率の改善も期待できるとのことだ。また、ドライバーにとっては、運転日報の作成を補助する機能の活用により、日報記入の抜け漏れの防止につながるメリットがある。
また、同サービスは利用中のETC2.0車載器からデータを取得するため、一般的な運行管理サービスとは異なり、新たに専用デバイスを用意する必要がないのが特徴だ。さらに、国が公共データとして収集した車両の位置情報を民間活用するので、車両位置情報を使った運行管理を低コストで運用可能になる。
さらに、車両と従業員IDをひもづけることで、乗車履歴からドライバーの業務時間が把握できるようになる。この機能を利用することで、ドライバーの業務拘束時間の累計を即時に把握できるため、業務管理の効率化にも貢献するとしている。
パナソニック モビリティ事業戦略室 プロジェクトリーダー 森俊彦氏は会見で、「現在の運送業界は中小企業が多く、社長が自らドライバーとして運転するなど、非常に多忙な会社もある。このサービスは初期費用を抑えながら素早く導入できるので、物流業界のデジタル化に貢献できれば」と話した。
物流業界では、貨物量の急増やドライバーの高齢化などによって、ドライバー不足が深刻化している。そうした中で、2024年4月には労働基準法の年間残業時間規制が開始するなど、労働環境や労働条件を改善して、働き方改革の実現に向けた取り組みも推進されている。
しかし実際の業務においては、車両を厳密に管理するための手間など、運送事業者には大きな負荷がかかっている。業務効率化のために、さまざまな運行管理サービスも広がってはいるが、専用のデバイスが必要となることも多く、導入コストが課題となる。
こうした背景を受けて両社は、ETC2.0車載器を搭載した車両で利用可能な運行管理サービスに向けた共同実証を、2021年6月から開始している。既に普及しているETC2.0車載器を活用することで、新たな専用デバイスの購入コストが不要な運行管理サービスを目指したという。
スマートドライブ 営業部部長 稲垣亮太氏は「当社のポリシーとして、特定のデバイスに偏らないサービスを心掛けている。当社の製品として複数のデバイスからのデータを活用したソリューションも展開しているので、将来的にはETC2.0 Fleetサービスでも活用できるデバイスの幅を広げていきたい」と述べた。