地球全体の表面がほぼ氷に覆われたおよそ6億年前の「全球凍結」の時代にも光合成をする生物がいたことや、その後に細胞内に核を持たない真正細菌(バクテリア)、核を持つ真核生物が栄えていった証拠を発見した、と東北大学などの国際研究グループが発表した。全球凍結が生物の盛衰に与えた影響を明らかにし、また動物の種類や数が爆発的に増えた5億年あまり前の「カンブリア爆発」に至る経緯を説明できる可能性もあるという。

全球凍結は24億年前と7億年前、6億年ほど前の少なくとも計3回起きたことが、近年の研究で分かっている。一方、生物は40億年ほど前にまず真正細菌が誕生し、30億年前に古細菌、そして20億年前に真核生物が出現してきた。真核生物から8億~7億年前に多細胞動物が現れ、海綿動物からイソギンチャク、クラゲなどの刺胞(しほう)動物、さらに節足動物や脊椎動物などの左右相称(対称)動物へと進化してきたとされる。ただ、全球凍結とこうした進化の関係はよく分かっていなかった。

そこで研究グループは、直近の全球凍結が起きた「マリノアン氷期」からその後に氷が解けた時代にかけての、6億5000万~6億3000万年前の岩石試料を、中国湖北省で2011年に採取。そこに含まれる光合成生物、真正細菌、真核生物に特有の有機分子の量を、それぞれの生物が存在したことの指標となる「バイオマーカー」として割り出した。

その結果、全球凍結の時代にも光合成生物である藻類が存在したことや、氷が解けた後に生物が少ない時期を経て真正細菌が増え、さらに真核生物が栄えたことの証拠を捉えた。

全球凍結は世界の大陸が一つにまとまっていた時代に、海嶺の火山活動による二酸化炭素(CO2)の放出が減って起こったとされる。その後、大陸が分かれると海嶺のCO2放出が増えて温暖化。すると氷が解けてCO2が海に多く溶けるようになり、大気からCO2が減って気温が下がった。

研究グループは、モデル計算で提唱されてきたこうした気候変化に対し、マリノアン氷期やその後の時代についてバイオマーカーを明確に示し、生物の変化の全体像を明らかにしたとしている。岩石試料からバイオマーカーが見つからない時代には、気温60度といった極端な温暖化で生物が減り、その分、進化が起きやすくなったと考えられる。また、海にCO2が溶け込み気温が下がる過程では真正細菌が増加。さらに気温が下がり、真核生物が増えたと解釈できる。

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    全球凍結の時代とその後に起きた生物変化(海保邦夫・東北大学名誉教授提供)

この時代に初期の動物が進化したとされる。研究グループの東北大学の海保邦夫名誉教授(地球環境史)は「全球凍結と動物進化の関係を解明する重要な鍵になる成果となった。今回明らかになった過程が、左右相称動物などが大進化したカンブリア爆発につながったとの仮説が成り立つ」と述べている。

研究グループは東北大学、中国地質大学で構成。成果は地球科学の国際誌「グローバル・アンド・プラネタリー・チェンジ」の電子版に8月17日に掲載され、東北大学が同23日に発表した。

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