日本郵船は9月2日、自動車専用船の積み付け計画作成業務の一部自動化を目的とした取り組みを開始すると発表した。
自動車専用船ではあらかじめ作成された積み付け計画に沿って、1台ずつ決められた間隔で積載している。しかし、その積み付けパターンは自動車の積載台数や車種、寄港数などによって膨大な組み合わせとなるうえ、高い積載率での積み込みや、積み降ろし作業時に必要な船内スペース確保など、さまざまな制約を満たしながらの積み付け計画作成は困難とされている。
そのため、同社では専門のプランナーが経験を重ねて、積み付けパターンや配列法を習得して積み付け計画を作成していた。しかし、従来の手法ではプランナーの経験や技量の差によって積み付け計画にバラつきが生じること、1隻あたりの計画作成時間が最大で約6時間程度を要すること、急な積み付け計画の変更に多くの業務負荷が生じることなど、多くの問題があったという。
こうした背景を受けて同社は、富士通が提供する量子インスパイアード技術「デジタルアニーラ」を使用して、積み付け計画作成業務の効率化に取り組む。同技術は量子の振る舞いから着想を得たデジタル回路であり、膨大な組合せの中から最適なものを高速に導き出せる強みがあるとのことだ。
両社が実施した実証実験の結果から、同技術を活用することで、これまでベテランのプランナーでも最大6時間程度を要していた作業を約2.5時間にまで短縮できたという。年間換算では、積み付け計画作成業務が4000時間短縮できる見込みだ。
両社は9月1日から実業務でのトライアル運用を開始している。トライアル運用の中で、さらなる処理の高速化を図るなどシステムのレベルアップを進めて、2022年4月からの本格的な運用開始を目指す。