島津製作所ならびに国立循環器病研究センター(国循)は、脳血管障害リスク遺伝子の中でも、脳梗塞発症との関連が強いと考えられる「RNF213」という遺伝子がコードするタンパク質の4810番目のアルギニンがリジンに変異する遺伝子多型「RNF213遺伝子p.R4810K多型」を1μlの血液から直接リアルタイムPCR法によって1時間以内に検出できる技術を確立したことを発表した。
同成果は、国循 脳神経内科の猪原匡史部長、同 服部頼都医長、同 吉本武史医師、齊藤聡医師らと島津製作所の共同研究によるもの。
従来、脳梗塞は遺伝することはなく、高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病が危険因子であるとされてきた。しかし、近年の研究から、アジア人の方が白人と比べ頭蓋内に頚動脈の狭窄・閉塞病変が多いことなどから、何らかの遺伝子が関与しているのではないかと考えられるようになってきたという。
猪原部長らの研究チームは、もやもや病の発症に関係すると報告されているRNF213遺伝子p.R4810K多型が、脳の比較的太い血管の動脈硬化を主因としたアテローム血栓性脳梗塞の強力な感受性遺伝子であることを2019年に報告してきており、その後の研究も含めると、同多型は、日本人の健常者の2-3%、脳梗塞患者の約5%、頭蓋内の大血管狭窄(もしくは閉塞) に起因する脳梗塞患者の25%が有していることが分かってきたとする。
また、同多型は、日本を含む東アジア人が多数保有する遺伝子多型であり、希少難病であるもやもや病のみならず、コモンディジーズである脳梗塞にも強く関連していることが示されたことから、その判定は、脳梗塞の病態や病型の把握に役立つことが期待されるとしており、今回の技術開発に至ったという。
なお、島津製作所では、まず受託分析子会社である島津テクノリサーチにて2021年9月1日より、国循との共同研究に参加する医療機関に向け、研究目的に限定した、血液検体中の同多型の有無を検出する受託分析を開始(一般からの分析希望は対象外)。今後は、海外展開なども視野に入れた取り組みを進めていきたいとしている。