PwCコンサルティングとサンリオエンターテイメントは9月2日、幸福学および脳科学の知見を活用した「Kawaii」に関する共同研究(以下、脳科学×幸福学×Kawaii)の第一弾として、「全国Kawaii実態・幸福度調査2021」の結果を発表した。同調査は、全国の15歳から79歳の男女を対象にインターネットで実施し、5,703の有効回答を得ている。

「脳科学×幸福学×Kawaii」は、幸福学および脳科学の知見を取り入れてKawaiiのメカニズムを解明し、Kawaiiの力を最大限に使い、世の中の幸福度を高める、また、やさしさを届けることを目的に2021年5月に開始したもの。

脳科学 × 幸福学 × Kawaii 研究 」の概要|

サンリオエンターテイメント 代表取締役社長 小巻亜矢氏は、オンライン説明会で、共同研究への思いとして、次のように語った。

  • サンリオエンターテイメント 代表取締役社長 小巻亜矢氏

「今回、長年の夢だった体感としての Kawaii の パワー を客観的にデータ化できたことは、私たちの仕事の意義につなげることができたと共に、自信を持って次のイノベーションへの第一歩となった。今回の調査結果は、パーパス経営において、エンジンとなっていくと考えられる。kawaiiは汎用性が高い感情であり、ウェルビーイングの視点で多様な業種と組み合わせることができると思う。次のステップとして、kawaiiと脳科学をかけ合わせ、バイタルデータを取得することにした。研究すればするほど、知りたいことが見えてくることもあり、ラボを設立した。これから、さまざまな業種や研究者の方々とkawaiiを掘り下げていきたい」

調査結果については、PwC コンサルティング ディレクター 髙木健一氏が説明した。PwCコンサルティングは、「Kawaii」や「幸せ」といった抽象的な概念を定量的に捉えることが、共同研究の第一歩と位置づけ、仮説構築が重要となる調査設計では、「Kawaii」に関する過去の研究の文献で論じられている「Kawaiiは複雑で多義的な概念」であること、体感的・経験的に「Kawaiiを感じることは幸せにつながるのではないか」といったことを仮説とし、これらを明らかにするため調査設計に組み込んだ。その結果、仮説は概ね定量的に実証され、高い解像度で「Kawaii」を捉えることができたとしている。

  • PwC コンサルティング ディレクター 髙木健一氏

まず、「自分自身に対してKawaiiと思うか」「身近な対象に対してKawaiiと思うか」「他人からKawaiiと思われていると思うか」といったように、多面的に「Kawaii」に関する感情を調査した。その結果、Kawaiiに関する感情は、幸福度の高さとの相関を示す傾向が明らかになった。自分自身に対しても、身近な人に対してもKawaii感情を抱く人は、最も高い幸福度を示すことも見えている

また、Kawaiiは約9割(89.5%)の人が抱く感情であり、約7割(69.2%)の人は週に1回以上はKawaiiと感じているという。加えて、6割弱(55.5%)の人は「Kawaiiと思われたい」、6割弱(58.5%)の人は「Kawaiiと思われているはずである」と考えていることもわかった。

  • 週1回以上自分自身に対してかわいいと思う人の割合(下段は分母となるN数)

今回の調査では特定のキャラクター、人物、音声に対するKawaiiやその他感情も調査した。その結果、赤ちゃんやシナモロール(サンリオのキャラクター)などがKawaiiと感じる対象の上位に入った。

今回の調査では、サンリオのキャラクターを利用。例えば、「ベビースキーマに起因するかわいさ」としては、シナモロールが使われた。

  • :{キャラクターまたは人物、音声 }についてどう思いますか。

  • 調査で利用したキャラクター

Kawaiiや関連する感情についての因子分析の結果、最も強いのが「ベビースキーマ因子」(赤ちゃん的な因子であり、ノーベル賞受賞者の動物行動学者であるコンラート・ローレンツ氏(1903-1989)が提唱した概念から命名)だったが、「グッドルッキング因子」(美しいなどの見た目の良さを示す因子)、「カウンター因子」(ダサい、気持ち悪いなどのネガティブな意味を持つ因子)を持つキャラクターに対してもKawaii感情を得ることも明らかになった。

なお、PwCコンサルティングが昨年実施した調査(全国消費者実態・幸福度調査2020、2020年9月調査)では、人によっては幸福度の増加・低下両面あるが、全体としての幸福度の水準には新型コロナウイルス感染症の影響は限定的であることが示唆された。しかし、今回の調査(2021年6月調査)では、幸福度の水準、および、実感値の低下が見られたという。