韓国唯一の専業ファウンドリKey Foundry(Samsung ElectronicsやDB HiTekは兼業ファウンドリ)は、顧客であるファブレス企業向け設計サポートの強化を目的として設計サポートツール「PDK Version E Process Design Kit, enhanced version)」を開発したことを発表した。
同社は、2020年に韓MagnaChip Semiconductorのファウンドリ事業と同社のファブ4(韓国 清州市にある月産9万枚の200mmファブ)を引き継ぎ、専業半導体ファウンドリとして設立されたもの。Key Foundry設立後、MagnaChipは、中国資本が買収することになっていたが、米国政府対米外国投資委員会(CFIUS)が2021年6月15日(米国時間)、中国資本による買収を保留する暫定命令を出したことから、事実上中国への売却が不可能となった。
PDKは、ファウンドリが提供する半導体製造プロセス関連のデータベースであり、これにより顧客はファウンドリの提供する製造プロセスと製造装置の特性に適した設計を行うことができるようになる。かつて日本の多くのDRAMメーカーがポストDRAM事業としてファウンドリを始めたが、マスクを持ち込んだ顧客の製造委託に応じただけで、PDKを用意するという文化が育たなかったため、敗退の一因になったといわれている。
Key Foundryは、Synopsys、Cadence Design Systems、Siemens(旧Mentor Graphics)などの主要なチップ設計ツール企業の環境をサポートするPDKを提供する形で、顧客の設計を支援してきたが、PDKバージョンEは、PDKセットアップ環境(PDK Organizer)とゲートレベルGCELLを追加して顧客の設計の利便性を向上させたという。
GCELLは、基本ユニットデバイスの組み合わせで構成される機能ユニットをサポートすることで、製造プロセスで提供される独立した基本ユニットデバイスのみをサポートする従来の方法とは異なり、設計の利便性が向上し、設計時間が短縮されるという。
Key Foundryは、PDKバージョンEをすべてのBCD(Bipolar-CMOS-DMOS)プロセスに適用することで、アプリケーションをミクスドシグナル、エンベデッドフラッシュ、および高電圧プロセスに拡張していくとしている。特に、近年需要が高まっているBCDプロセスの場合、従来モデルと比較してシリコン特性をより正確に表す追加の更新モデルを備えたPDKバージョンEの提供により、顧客のすそ野を拡大することができるものとしている。
なお、同社が実施したすでに先行して同ツールを利用した顧客に対するヒアリングでは、その大多数が、ツールが役に立ったという意見を出しており、同社では、ツールの設計環境の簡単なカスタマイズ性と高度な設計機能およびレイアウトの利便性が、そうした意見の背景にあるとしており、今後も継続して機能強化を図っていくとしている。