経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は8月26日に、「大規模水素サプライチェーンの構築プロジェクト」と「再エネ等由来の電力を活用した水電解による水素製造プロジェクト」について公募を行い、合計11件の研究開発・実証テーマを採択したと発表した。

水素ガス利用技術などを実用化する研究開発プロジェクトは、日本政府が2050年までに脱炭素化を実現する「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けたプロジェクトの一部として、水素ガス利用技術の実用化を図る基盤技術の確立を目指すものだ。

具体的には、今回の研究開発プロジェクトを実施して「商用水素サプライチェーンの構築を見通す技術の確立」「余剰な再生可能エネルギーの電力を水素に変え、熱需要の脱炭素化や基礎化学品の製造などで活用するPower to Xの実現」「水素需給創出による好循環を通じた自立的な水素の普及拡大・社会実装」といったことを図ることを目指している。

今回採択されたプロジェクトは、政府が設けた総額2兆円のグリーンイノベーション基金事業の一環として実施するもので、今回がその基金事業による第1号の研究開発・実証事業の案件になっている。

大規模水素サプライチェーンの構築プロジェクトでは、液化水素あるいはメチルシクロヘキサン(MCH)を用いた大規模水素サプライチェーンの実証研究や液化水素関連機器の評価基盤の整備、メチルシクロヘキサンの直接電解合成などの革新的な技術開発を進めて、水素供給コストを2030年時点では30円/Nm3(船上引き渡しコスト)、2050年に20円/Nm3以下(船上引き渡しコスト)を実現する技術確立を目指しているという(1Nm3は標準状態における体積)。

  • 水素ガス利用技術などを実現する各研究開発プロジェクトで実施する大規模水素サプライチェーンの構築と水素発電技術プロジェクト

    大規模水素サプライチェーンの構築プロジェクトで行う予定の研究開発内容と担当機関・企業(引用:NEDO)

同時に、水素ガスタービン発電技術(混焼、専焼)をガスタービン実機によって実証することによって、大規模な水素ガスなどの需要を創出する技術確立も目指すという。

各研究開発プロジェクトでは、大規模水素サプライチェーンの実証研究である液化水素サプライチェーンを日本水素エネルギー(東京都中央区)、ENEOS、岩谷産業のグループが担当し、メチルシクロヘキサンのサプライチェーンはENEOSが担当する。

液化水素関連材料評価の基盤の整備は物質・材料研究機構(MINS)が担い、革新的な液化、水素化、脱水素技術の開発は、川崎重工業とENEOSが請け負う。

水素発電技術の研究開発プロジェクトでは、水素発電技術の混燃技術の大型ガスタービン分野をJERAが、混燃技術の中型ガスタービン分野を関西電力がそれぞれ担当する。さらに、大型ガスタービンによる“水素専焼”技術をENEOSが担うという。

再エネ等由来の電力を活用した水電解による水素製造プロジェクトでは、余剰な再生可能エネルギーなどを活用した国内水素製造基盤の確立や、先行する海外市場獲得を目指すべく、アルカリ型およびPEM型水電解装置の大型化やモジュール化、優れた要素技術の実装、水電解装置の性能評価技術の確立といった技術開発を目指し、水電解装置コストを現在の最大6分の1程度にすることを目指すという。

水電解装置の開発と併せて、ボイラーなどの熱関連機器や基礎化学品の製造プロセスと組み合わせ、再生可能エネルギー電源などを活用した非電力部門の脱炭素化に関するシステム全体を最適化する実証研究を行う想定だ。

こちらも日本の有力企業・研究機関が担当し、大規模アルカリ型水電解装置の開発、グリーンケミカル実証は旭化成と日揮ホールディングスが担当。大規模 PEM 型水電解装置の開発、熱需要の脱炭素化実証は山梨県企業局、東京電力ホールディングス、東京電力エナジーパートナー、東レ、日立造船、シーメンス・エナジー、三浦工業、加地テックが担当する。

水電解装置の性能評価技術の確立に関しては産業技術総合研究所(AIST)が担う。

  • 担当企業

    再エネ等由来の電力を活用した水電解による水素製造プロジェクトの研究開発内容と担当企業(引用:NEDO)

水素ガス利用技術を実用化する研究開発プロジェクトに先行したNEDOによる実証プロジェクトに関する既報

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