サイボウズは8月27日、日本企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の失敗パターンと、その解決法に関するセミナーを開催した。同社の事業戦略室kintoneビジネスプロダクトマネージャー 相馬理人氏がDXを成功させるための秘訣を解説したので、その様子をお届けする。
日本国内において、2018年以降に約20%の企業が新たにDXへの取り組みを開始している。また、DXに向けた取り組みは大企業だけでなく中小企業でも増加しており、デジタル技術を使用して組織やビジネスプロセスを変革しようとする企業が非常に増えているとのことだ。
こうした動きは近年の新型コロナウイルス感染症の流行によってさらに急速に強まっており、約半数の企業において、コロナ禍でDXが加速したという調査結果もあるという。DXが加速した領域としては、業務の効率化が最上位である一方で、既存事業のデジタル化など短期的な取り組みにとどまる企業も目立つ。
DXに取り組む企業が増加している中で、DXの成功を実感している企業は半分にも満たず、約8割の企業が「成果を感じていない」「十分な成果が出ていない」と感じているとのことだ。その一方で、総務省の調査によるとDXの実施による売上高押上げ効果は製造業で+5.7%、非製造業で+4.2%であり、DXを実施するか否かによって企業の経営状況に差が開き始めていることが明らかになっている。
相馬氏はセミナーの中でダメなDXを「ダメックス」と呼び、ダメックスの特徴として「なぜDXを行うのか現場に伝わっておらず、知識やノウハウが不十分な状態にもかかわらず、大きなスコープで取り組みが行われ、単発的に終わる」点を指摘した。また、DXが失敗に終わる要因を3点挙げて、これらのうちどれが欠けてもDXは成功しないと述べた。
1点目は理想の共有が足りないDXである。経営層が一方的に支持をするのみで、なぜDXに取り組むのかを社員が理解しないために、現場にストレスがかかることで失敗に結び付くのだという。会社の戦略やビジョンにDXが結びつけることはもちろん大切だが、何よりも現場社員がそれを理解している必要があるということだ。
2点目は継続性がないDXである。本来DXは変革を続けることを指すのだが、経済産業省の調べより「DXはレガシーシステムを刷新すること」あるいは「競争優位性が確保できていればDXは不要」とするなど、短期的な対応であると捉えている企業が多数存在することが明らかになっている。このように、DXの本質から外れた解釈がDXの失敗につながる点を指摘した。
3点目は適切な人がいないDXである。相馬氏は、日本が主要先進国と比較してDXが遅れている要因の一つとして、IT人材が社外にいる点を挙げた。ITベンダーはシステムの納品をゴールとする企業が多く、継続的な課題解決にはつながらないのだという。同氏は、企業が求める課題と理想をITベンダーと共有することで、伴走パートナーのような関係性の構築することを勧めていた。