転職をする際に、企業からほぼ必ず提出を求められるのが職務経歴書だ。転職経験がなく、1社でキャリアを積み重ねてきた人は、目にしたこともないかもしれない。
職務経歴書の書き方を解説した書籍やWeb記事は数多くあり、今は転職情報サイトなどから職種・業種別にテンプレートが公開されている。ただ、最終的には自分で企業の人事担当者にアピールする内容を考えて、文章を書かなければならない。その結果、当たり障りのない実務経験を書いてしまうことはよくあり、転職市場において売り手市場が続くエンジニアにとっても、職務経歴書の作成は頭を悩ませる作業となる。
「すべての人に最善の選択肢をマッチングする」をミッションに掲げ、エンジニア向けのサービスを複数提供するLAPRASは、エンジニアの転職活動をサポートすべく、8月25日にエンジニア向け職務経歴書作成ツール「Smart CV Creator(β)」をリリースした。
同社代表取締役CEOの島田寛基氏は、同日のリリース発表会にて、「職務経歴書作成の負担を減らすとともに、エンジニア自身が企業から正しく評価されることでミスマッチをなくし、働きがいのあるキャリア形成の実現を後押ししたい」と意気込む。
「Smart CV Creator(β)」は無料で使用できるWebサービスで、複数の質問への回答が自然言語処理され、自動で文章化した職務経歴書が作成される。作成した職務経歴書は、テキストファイルとしてダウンロード可能で、ダウンロードした職務経歴書の内容を他の転職サービスに使用したり、企業の中途採用応募書類として提出したりできる。LAPRASが提供する職業紹介サービス「LAPRAS CAREER」に申し込めば、同社のキャリアコンサルタントへ職務経歴書を基に相談もできる。
ユーザーは、以下の1から6の手順で職務経歴書を作成していく。
- 職務経歴書のポイントを確認
- 学歴を記載
- 過去に関わった主要なプロジェクトを3つ入力
- プロジェクトで得た経験を深堀り
- 今後のやりたいことを入力
- 自動作成された職務経歴の内容を確認、必要に応じて修正
例えば、プロジェクトの深堀りをするステップでは、「これらのプロジェクトを通じて、どのような『今後のキャリアで生かせる経験』が得られましたか?」などの質問と、その解答が5つ示される。ユーザーは解答を選択することで、自ずと企業担当者が特に知りたいエンジニアの業務経験を抽出できる仕組みだ。
同サービスのプロダクトマネージャーである鈴木亮太氏は、「一般的に職務経歴書を作成していくと、当たり障りのない実務経験を書いてしまいがちだが、採用担当者が見たいのは特殊な要件での環境だったりする。サービスのローンチにあたり、エンジニアの職務経歴書を徹底的に分析して、質問に対する回答項目は5つに絞り込んだ」と明かす。
職務経歴書を修正する段階では表現のサポートも行う。例えば、単に「Javaによる設計」という記述ではなく、「Javaを用いた決済システムのアーキテクチャ設計」といった簡潔な表現を、ツール側が自動で提示する。
LAPRASではすでに、エンジニアのポートフォリオを作成するキャリアマッチングプラットフォーム「LAPRAS」を提供している。なぜ、職務経歴書を作成する新サービスを提供するのか?
理由の1つには、転職市場における職務経歴書の重要性が挙げられる。LAPRASが同社のプラットフォームの情報を見て採用活動を行う企業にアンケートを行ったところ、8割近くの企業がLAPRASのポートフォリオを確認しても職務経歴書の提出を必須と考えているという。
また、大企業や受諾開発のエンジニアは本業で成果を挙げていても、契約内容や業務規定、業界の慣例などからインターネット上に自身のスキルや経験を公開しにくいものだ。鈴木氏は、「Web上での公開アウトプットが難しいエンジニアにとって、職務経歴書は自分のスキルや経験を表現する手段として、依然として重要だ」と指摘する。
もう1つが、「転職先を探す」サービスが充実する一方で、「キャリアの振り返り」や「将来に向けたキャリアプランニング」の領域は改善の余地が大きいからだ。既存の転職サービスでは、そのサービス独自のフォーマットでしか職務経歴書を作成できず、サービス独自の選択肢や表現に縛られて、エンジニアのスキルや経験をうまく表現しきれないという現実がある。
「職業のマッチングは自分の在り方・生き方に関わることで、職務経歴書の作成は自己表現のための知的生産活動であると考える。職務経歴書の作成、流通、評価をデジタルで再発明していきたい。「Smart CV Creator(β)」の提供はそのための第一歩だ」(鈴木氏)