新型コロナウイルス感染症の動向が見通せず、働き方を柔軟に対応させなければならない日々が続きそうだ。在宅勤務かそうでないかに関係なく、ワークライフバランスは働く人にとって重要だが、そもそも"バランスをとる"という考え方が違うのでは、という指摘がある。

上記の指摘は、企業カルチャーを専門としたコンサルPerformancePointのCEO、Brad Federman氏のもの。Federman氏がForbesに寄稿した記事「Forget Work-Life Balance, It's All About Work-Life Sway」でそう主張している。

ワークライフバランスとは、ワーク(仕事)とライフ(生活)のバランスをとることだが、Federman氏はワークライフバランスの問題は、「バランス」だとする。「生活はシフトしており、永続的なものは何もない。完璧なバランスを見出すのはとても難しい」とFederman氏。同氏が提唱するのが、「バランス」ではなく、"揺らぎ"などの意味を持つ「スウェイ(Sway)」であると。

例えとして用いるのが、サーフィンだ。先のオリンピックで公開競技として開催されたことが記憶に新しいが、サーフィンは天候や波などさまざまな流動的な、しかも我々の制御が難しいものに対応しなければならない。「重要なのは、各要素を管理したり制御しようとするのではなく、状況に合わせて適応すること」とFederman氏は記す。揺らぎながら仕事と生活を両立させるポイントとして、Federman氏は下記を挙げている。

1)状況を理解する
市場の状況や状況、コロナの動向、気候など、我々を取り囲むものは常に変化している。家庭の状況も、会社の上司や同僚も、何一つとして永続的なものはない。

まずは状況を冷静に理解し、変化をチャンスに変えるタイミングを捉えよう。時には、大きなプロジェクトにエネルギーを注がなければならないし、仕事が比較的安定している時は生活の方に時間やエネルギーを向けることができる。

2)緩める/引き締める
揺らぐことの目的は、変化する状況に適応させること。これにより、固定したバランスにしがみついていた時に感じていたストレスを軽減できるという考え方だ。

仕事の負荷が大きい日もあれば、軽い日もある。イライラや怒りを感じることは、メンタル上に良い影響を与えず、生産性にもよくない。柔軟性や忍耐力を持って対応しよう。

3)時間は量より質
ワークライフバランスという時、何時から何時まで仕事、何時からは私生活と、時間の量で区切りがちだ。だが、視点を変えると違って見えてくる。どのぐらいのエネルギーを注ぐのか?質の高い時間を過ごそうと考えれば、例えば私生活の時間が量的に少なかったとしても、結果として良い私生活を送れていると言えるのではないか?

4)目標を意識する
仕事と私生活を考えるとき、合わせて自分の目標を意識しよう。仕事の目標、私生活の目標を意識することで、モチベーションが出てくる。
5)自分のケアを優先させる
何かがうまくいかないと落ち込むという人は多いだろう。それが仕事、あるいは生活に重要であれば打撃はさらに大きいはず。

揺らぎの考えでは、自分のケアをすることも含まれる。落ち込んでいる時、健康状態がよくない時など、自分をしっかりケアすることで、仕事と生活が充実する。そして、周囲に合わせて揺らぐことができるーーこれこそが、本当のバランスだとFederman氏は記している。

"不規則で迫りくる海(水)は制御できない"。完璧なワークライフバランスは困難なもので臨機応変な対応を心がけることをサーフィンを例にわかりやすく説いている。実に上手な比喩だが、サーフィンには基礎技術を要するのも事実だ。波の上に立てるまでに確立しておかなければならないものもある。プロジェクト管理Wrike(米Citrix Systems)が2020年の9月に行った調査によると、約半数がテレワーク下で何が期待されているか明確に理解していないと報告(英文ニュースリリース)している。ワークが確定しないため、ワークライフバランスが難しくなる。波の上に立てていない状況に陥るのだ。

継続的に従事する仕事を俯瞰すると、ルーチン(作業)と分析(見直し)の繰り返しだ。新規に立ち上げる部署や事業は効果的なルーチンを確定させることが重要で、これができていないと前に進めない。リリースにある"在宅勤務の暗闇"(in the Dark over Remote Work)に陥ってしまう。チーム内で合意を形成し、基本的なルーチンを確定させなければならない。ルーチンが定まれば、作業と見直しをサイクルで繰り返す。確立された見直し手法としてPDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルがある。計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Act)のサイクルを回すことで継続的な改善を生み出す。繰り返すうちにルーチンを体得し成果を出せるようになれば、しめたもの。波の様子を伺いながらサーフボードを制御できるようになる。

上記のWrikeをはじめプロジェクト管理ツールにはカンバン形式のボードを含むものも多いが、計画、実行、評価、改善それぞれのタスクやツールを記載したボードをPDCAプロジェクトとして設置しても良いだろう。個人的にローカルで扱うならば、P、D、C、Aのフォルダを用意しそのなかに関連するファイルやツール類へのショートカットを入れる。

  • デスクトップにPDCAフォルダ

せっかくの決意のもとにPDCAフォルダを作成したのにいつの間にか忘れてしまう。よくあることだがそんなことは避けたいものだ。これを防ぐためにWindowsの場合schtasksコマンドが備わる。定時にフォルダを起動をさせれば忘れないだろう。まずPDCAフォルダ開くbatファイル(task1.bat)を用意し、作成したPDCAフォルダが開くコマンドを以下のように記載しておく。

START C:\Users\user\Desktop\PDCA\

そのうえで管理者権限でschtasksコマンドを実行する。午前のタスクが終わって落ち着く頃の15時くらいがいいだろうか。以下はデスクトップに作成したtask1.batを毎日15時に実行させるものだ。/tnオプションには任意のスケジュール名Pdcaを付してある。

C:\Users\user>schtasks /create /tn Pdca /tr C:\Users\user\Desktop\task1.bat /sc daily /st 15:00

さて起動するだろうか。しばしの時間、ラジオをBGMに過ごしていると、

  • 定時にPDCAフォルダが起動する

    定時にPDCAフォルダが起動する

起動した。画面いっぱいに広がるPDCAフォルダは、やや強制的な雰囲気すら醸し出している。削除するには

schtasks /delete /tn Pdca

とすればよい。

  • 設定したタスクを削除

    設定したタスクを削除

schtasksコマンドはとても豊富で簡易なタスクをコマンドベースで実行できるのがよい。実行ファイルも取り扱えるのでテキストエディタやブラウザを準備することも可能だ。

Swayな取り組みを行うには弛緩したスタンスも重要とのこと。プラモデルや自作マシンを組み立てるように空いている時間に楽しみながら改善マインドを醸成するのも良いかもしれない。