メダカの祖先は約7400万年前にインドで誕生した「セトナイメダカ」と分岐し、恐竜など生物が大量絶滅した中生代末の時代も生き延びて日本を含むアジアに分布を拡大していったー。このような興味深い研究成果を琉球大学、東北大学、神戸大学など国内13研究機関のほか海外7研究機関も参加する国際共同研究グループが発表した。世界中からメダカ科魚類を収集し、そのルーツに迫るためにミトコンドリア全ゲノムなどを解明した成果だという。
メダカは童謡「めだかの学校」で歌われるように、日本人にとって馴染みの深い魚の代表格だ。日本にはミナミメダカとキタノメダカが生息するが、生息環境の悪化や小川の減少などにより個体数が減少。現在、環境省により絶滅危惧種Ⅱ類に指定されている。メダカ科魚類はこれまでに37種が知られており、東南アジアを中心に、西はインドから東は日本列島まで広く分布している。しかし、メダカ科魚類の共通祖先が、いつどこで誕生して分布が広がったかについてはこれまで明らかになっていなかった。
琉球大学などの国際共同研究グループは、各種のメダカが生息する世界各地のメダカ科魚類を広く収集した。そしてルーツを明らかにする系統樹を作成できるミトコンドリアの全ゲノムの塩基配列(1万1233塩基対)と5つの核遺伝子(RAG1、Myh6、SH3PX3、Zic1、TMO-4C4)の塩基対(4204塩基対)の解析を行った。
その結果、標高1000~2700メートルの山々が全長1600キロにわたって連なる西ガーツ山脈や、その西側の平野部を含むインド・西ガーツ地方に生息するセトナイメダカが、メダカ科魚類の系統進化の中で最も古くに分岐した種であることが判明した。また、日本のキタノメダカやミナミメダカを含む東南アジアや東アジアの種は、すべてセトナイメダカと、共通の祖先から系統樹上で二分岐した関係である「姉妹関係」にあることが明らかになった。
研究グループはさらに、収集できたメダカの化石に関する情報をもとにメダカ科魚類の分岐年の推定研究も行った。すると、セトナイメダカとそのほかのメダカの共通祖先との分岐は、まだ恐竜が存在していた約7400万年前(6600~8800万年前)の中生代後期にまでさかのぼり、分岐の場所はインド亜大陸であることも分かった。この時代はインド亜大陸が超大陸のゴンドワナ大陸から1億3000万年~1億6000万年前頃に分離し、インド洋を北上している時代に一致するという。
これらの解析結果はメダカ科魚類の起源はインド亜大陸にあったことを意味し、メダカ科魚類はインド亜大陸がユーラシア大陸に衝突・合体したとみられる3300万年~5500万年前より後にアジアに広く移動していったと考えられるという。
研究グループは「日本人に馴染みの深いメダカの祖先がはるばるインドからやってきたのは感慨深い。メダカの祖先はインド亜大陸の上で恐竜たちとともに生き、恐竜たちが絶滅した中生代末の大量絶滅をかいくぐって今も存在し続けているということだ」などとコメントしている。
国際共同研究グループには琉球大学、東北大学、長浜バイオ大学、和歌山工業高等専門学校、神戸大学、東山動物園、沖縄科学技術大学院大学、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)、京都大学、国立遺伝学研究所など国内13研究機関のほか、インド、ベトナム、ラオス、ミャンマーなど6カ国7研究機関の研究者が参加した。研究成果は生物科学誌バイオロジー・レターズに掲載された。
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