コロナ禍で働く場所が変化しています。ある調査では、2025年には、アメリカの全従業員の70%が月に5日以上リモートで働くようになるといわれており、テレワークとオフィスワークを効率的に活用したハイブリッドな働き方は、今後増えていくと予測されています。

コロナが収束する時、企業はどのような働き方を推奨するかを決めなければいけません。もちろん、オフィス回帰に舵を切る企業も出てくるでしょう。しかし、今回のようなパンデミックが二度と起きないという保証はありません。災害の多い日本だからこそ、ハイブリッドな働き方を推奨し、BCP(事業継続計画)の一部とする企業も出てくるかもしれません。

柔軟で多様化した働き方のオプションが与えられた時、従業員は業務によって働く場所を選べるようになります。例えば、集中したい時は自宅で、アイデア出しをしたい時はオフィスで働きたいと願う従業員がいれば、テレワーク解禁を機に地方に移住する従業員もいるでしょう。もしくは、介護や育児にまつわるトラブルが発生した時、その日だけ急遽在宅勤務に切り替えたいという従業員もでてくるでしょう。そして、多くの人がこの新しい働き方を歓迎しています。

そして、このような働き方は企業のパフォーマンスを向上する可能性もあります。活動内容に合わせ、環境を自由に選択できるオフィス形態「ABW(Activity-Based Working)」の効果の調査によると「ワーク・エンゲージメント」「個人のパフォーマンス」「クリエイティビティ」の項目において、ABWと固定席型ABWは高い数値を示し、働く場所を選択できるオフィス環境は仕事のパフォーマンス向上に寄与していることが明らかになっています。

  • クリエイティビティの観点から、「固定席」「単純フリーアドレス」「固定席型 ABW」「ABW」を比較した結果 資料:三井デザインテック、産学共同プロジェクトとして 「Activity Based Working(ABW)に関する調査研究」

しかし、マネジメント側には新たなる挑戦になります。分散したチームを管理し、コミュニティや文化を構築するのは容易ではありません。

分散した組織の一般的な課題には「見えない従業員の仕事の管理」「テレワーク中の社員の会議への参加率」「コミュニケーション不足により誤解」などが挙げられます。このような点を考慮すると、テレワークをする従業員がいる組織では、チームの全員が強い共同意識を持てるようにすることが重要です。以下、3つの具体的な方法を紹介しましょう。

(1)すべてのチームメンバーを巻き込めるマネージャーを選ぶ

多くの採用担当者は、テレワーカーの数を減らすのではなく、増やすことを期待しています。そうすることで、応募者増加につながるからです。しかし現場のチームマネージャーは、どうでしょうか?

分散型したチームの間で強力なコミュニティを構築するための最初のステップは、テレワークの利点を理解し、テレワークを選択した社員をどのようにエンゲージするかを理解しているマネージャーを選ぶことです。もし、マネージャーがテレワークに懐疑的であったり、分散型のチームやハイブリッドな働き方を一時的な流行だと考えていたりしたら、チームが最高の仕事ができるように導くことはできません。

では、分散したチームの効果的なマネジメントとはどのようなものでしょうか?オフィスに出勤しているオフラインチームのマネジメントとよく似ています。高いエンゲージメントと高いパフォーマンスのチームを構築してきた実績のあるリーダーを選び、テレワーカーのエンゲージメントとモチベーションを高めるためのプランを持っていることを確認することが必要です。そして、これらの計画は、画一的なものではなく長期的なプランであることが重要です。

従業員はさまざまな理由でテレワークを選択しているので、各従業員をエンゲージするためのマネージャーの戦略は、各従業員のユニークな才能、経験、および仕事上の願望に適合する必要があります。つまり、各従業員の状況や希望をきちんとヒアリングすることができるマネージャーが必要とされているのです。

(2)リモートでコラボレーションできるようトレーニングを行う

適切なマネージャーを選んだら、明確な期待値を設定し、分散したチームを効果的に管理できるようにするためのオンボーディングを行います。重要な目標の一つは、オフィスにいない従業員が最高の仕事をし、キャリアを伸ばしてくれることです。

そのためには、週1回の個別ミーティングが不可欠ですが、それは出発点に過ぎません。また、遠隔地にいる社員に、自分の仕事を同僚と共有する機会を常に与えることも重要です。そうすることで、たとえ物理的に同じ空間を共有していなくても、分散した従業員が一つのチームであることを強調することができます。

同様に、マネージャーはオフィスにいる従業員に、可能な限りテレワーカーとのコラボレーションを奨励すべきです。進行中の仕事を共有してフィードバックをする機会を設け、ミーティングを開催し、オンラインホワイトボードなどのツールなどを活用してチームメンバーが場所を超えてブレインストーミングを行うなど、マネージャーはすべての従業員の間にコミュニティを築くことを奨励する必要があります。

(3)リモートでのコラボレーションをサポートするテクノロジーを導入する

最近のQuartz社のレポートによると、68%の社員が新しいテクノロジーによってどこでも仕事ができるようになることが重要だと考えています。適切なテクノロジーを導入することは、テレワークしている従業員のエンゲージメントを向上するためには重要な要素です。テクノロジーの導入により、遠隔地の従業員がオンサイトの従業員と同じような素晴らしい仕事の体験をして、場所やデバイスを問わずに同じコミュニケーションやファイル共有のアプリケーションにアクセスすることが可能になります。

また、分散したチームでビデオ会議を行う際は、たとえチームの大半が物理的な会議室にいる場合でも、個人のWebカメラをONにすることをチームの方針とすることを推奨します。ここでの目的は、リモートで参加している従業員との交流を促すことです。通話中に全員の顔を見ることで、チームはより存在感を増し、場所を越えた同僚とのつながりを感じることができます。

テレワークが普及し、多くの企業がコミュニケーションやコミュニティ形成に課題を持つようになり、リモートでも雑談ができる仮想オフィスなど、結果的にさまざまなサービスが誕生しています。分散したチームには、自分のチームがどのような課題を抱えているかを把握するためのヒアリングを怠らず、どのような解決策があるのかを常に模索できるようなマネージャーが必要とされています。

分散した従業員にコミュニティ意識を持たせる

従業員がオフィスにいようが、リモートワークをしていようが、重要なことは、適切なマネージャーを選び、各従業員が協力して仕事に取り組むことを奨励し、各メンバーが自分の価値を認められていると感じられるようにできる限りの努力をすることが必要です。

一方で、オフラインでのチーム作りとリモートワーカーも含めたチーム作りの一番の違いは、チームメンバーがどこにいても最高の仕事ができるようにするために、テクノロジーがいかに重要な役割を果たすかを理解することです。分散したチームを、より強いコミュニティへ導く際は、適切なワークプレイステクノロジーがどのようにして最高の仕事をするのに役立つかを無視してはなりません。

著者プロフィール

國分俊宏 (こくぶん としひろ)

シトリックス・システムズ・ジャパン 株式会社 セールス・エンジニアリング統括本部 エンタープライズSE本部 本部長

グループウェアからデジタルワークスペースまで、一貫して働く「人」を支えるソリューションの導入をプリセースルとして支援している。現在は、ハイタッチビジネスのSE部 部長として、パフォーマンスを最大化できる働き方、ワークライフバランスを支援する最新技術を日本市場に浸透すべく奮闘中。