北海道大学、富良野市、日本オラクルの3者は8月11日、富良野市特有の産業の発展、住みよいまちづくりに向け、同市のスマートシティ推進施策を共同で立案していくと発表した。
具体的には、2021年度北海道大学の博士課程学生を対象とした教育プログラム「スマート物質科学を拓くアンビシャスプログラム」の履修科目として、ワークショップ「博士課程DX教育プログラム:北海道富良野市のスマートシティ推進支援」を8月30日から6カ月間、計6回実施する。
日本オラクルは、参加学生にコーチング、デジタル技術の活用およびデータ分析のトレーニングを行い、参加学生は富良野市から提示された2つの課題に対してオラクルのクラウド・サービスを活用したデータ分析および可視化を通して、施策の提案を行う。
そして、富良野市では、同市のスマートシティ推進施策の一環として、ワークショップから導き出された施策案を参考に実証実験の検討を行っていく。
2つの課題とは、「ふらのワイン」販売増を通じた、地域特有産業・農業の維持・発展と、リサイクル率90%の富良野のゴミ分別文化を維持・発展するカーボン・ニュートラルへの取り組み。
富良野市は、生産から収穫、製造、販売まで行うワイン事業をこれまで富良野エリアを拠点として、道内主要都市を中心に販売してきたが、コロナ禍で観光客が減少する中で、市外・道外への新しい販路開拓が求められている。そこで今回の取り組みでは、これまで蓄積した販売データの分析と、店舗や飲食店などの視察結果をもとに、コアなファン層の発掘や効率的な販売施策案を策定し、事業の収益アップと、地元農家の雇用維持や地域産業の持続化に貢献する。
もう一方のカーボン・ニュートラルへの取り組みでは、富良野市は市内に焼却施設を持たず、ゴミのリサイクル率が90%と高水準を維持しているが、一定の量の不適切な分別が発生していることが課題となっているという。そこで、富良野市内約600カ所の資源回収ステーションの曜日ごと、品目ごとの資源回収ステーションデータから、分別が不適切だったことを示すデータや現地視察、収集担当者からのヒアリングの結果をもとに、不適切な分別の発生率を効果的に低減する施策を策定し、カーボン・ニュートラルへの取り組みに役立てていく。
今回、3つの機関が連携して実施する「博士課程DX教育プログラム:北海道富良野市のスマートシティ推進支援」プロジェクトにおいて、北海道大学は「Oracle for Research」を利用することで、データ分析を行える「Oracle Autonomous Data Warehouse」や「Oracle Analytics Cloud」などの「Oracle Cloud Infrastructure」のクラウド・サービスを活用し、富良野市から提示された2つの課題に対する施策の提案に取り組む。
今回の取り組みについて、富良野市長 北猛俊氏は、「富良野市は、ICTの恩恵を市民誰もが享受できるデジタル社会を目指している。来年度、富良野ワインは50年目を迎える。デジタル×ワインにより、富良野ワインの販売促進に向けた施策の提案を期待している。また、ゴミの分別とリサイクルは富良野市民の誇りとなっている。富良野市は2050年にゼロカーボンシティになることを目指しており、リサイクル率90%からカーボンニュートラルを実現できる施策の提案を期待している」と述べた。
また、北海道大学 副学長/大学院理学研究院教授 石森浩一郎氏は、今回の取り組みを実施する背景を、「Society 5.0の実現には、あらゆる社会でのDXが必須だといわれている。それには、真にDX改革を理解した人材、とくに博士課程での人材育成が必要だ。今回のようなIT技術を実社会の変革に結び付けるDXの実証的体験を加えることで、人材育成をより完全にものにしたいと思っている。さらに、参加する学生が各自の専門分野の中でDXを活かし、Society 5.0を牽引する力を養っていくことを期待している」を説明した。
そして、日本オラクル 執行役員 公共営業統括 クラウド営業本部 本多充氏は、「今回の取り組みを非常に楽しみにしている。今回はDXの取り組みにはなるが、富良野市の現場の方の意見が非常の重要で、学生の方にとってはワークショップでプレゼンテーションを行うことで、富良野の人に伝え、理解し、実践してもらうというコミュニケーションの力が重要になる」と述べた。