米国半導体工業会(SIA)やSEMIの米国本部は、全米の電子産業、自動車産業、ICT産業、医療産業、防衛産業などの業界団体および業界横断的な経営者団体、労働者団体など20団体の連名として7月22日付けで、米国連邦議会の上院および下院の議員代表あてに書簡を送ったことを明らかにした。

書簡でこれら20団体は、米国の半導体製造強化にむけて520億ドルの政府資金供出を定めた「United States Innovation and Competition Act(USICA:米国のイノベーションと競争法)」と米国内の半導体製造分野への投資に対する25%の税額控除制度を新設する法案である「Facilitating American-Built Semiconductors(FABS:米国製半導体促進法)」の早期成立を要請したという。

米国連邦議会への書簡に名を連ねた20団体

半導体関連産業

  • SEMI
  • Semiconductor Industry Association(SIA)
  • IPC(プリント基板および半導体実装に関する工業会)

自動車関連産業

  • Alliance for Automotive Innovation
  • American Automotive Policy Council
  • Motor & Equipment Manufacturers Association(MEMA)
  • National Association of Manufacturers(NAM)
  • Truck & Engine Manufacturers Association

防衛産業

  • National Defense Industrial Association(NDIA)

医療産業

  • Advanced Medical Technology Association(AdvaMed)

    ICT産業

  • Software & Information Industry Association (SIIA)

  • Telecommunications Industry Association(TIA)

  • Information Technology Industry Council(ITI)

  • USTelecom – The Broadband Association

製造業団体

  • National Association of Manufacturers(NAM)

経営者団体

  • Tech CEO Council
  • TechNet
  • U.S. Chamber of Commerce

労働者団体

  • United Auto Workers (UAW)
  • North America's Building Trades Unions(NABTU)

米国では、2021年1月に2021年度国防授権法(NDAA)の一部として「Creating Helpful Incentives for the Production of Semiconductors for America Act(CHIPS:米国内での半導体製造に役立つインセンティブの創設に関する法律)が成立したが、包括的な法律であり、具体的な施策に関しては別の法律を立案する必要があった。USCIAは6月8日に連邦議会上院で賛成多数で可決したものの、下院ではまだ審議中である。FABSは、米国連邦議会上院の超党派グループが6月17日に提案して議会で審議中である。20団体は連邦議会が一刻も早くこれらの法案を可決して補助金供出や減税措置を一刻も早く実現するよう強く要請している。

書簡を提出した背景

SIAのプレジデント兼CEOであるジョン・ノイファ(John Neuffer)氏は、「米国連邦議会への我々のメッセージは単純である。アメリカと世界はより多くの半導体を必要としているのでアメリカ国内に半導体工場をもっと作ろうということだ。上院は、幅広い超党派の支持を得て、米国の半導体製造、研究、および設計を強化するための520億ドルの資金提供を承認することに向け前進した。今、下院と上院はこの法律をバイデン大統領に署名してもらう道筋を描く必要がある」と述べている。

図 世界半導体生産能力に占める各国・地域のシェア(半導体デバイスはサプライヤの国籍とは関係なく実際どこの国で製造されたか)の推移:米国は1990年には37%だったが、2020年には12%まで減少し、2030年には10%と予測 (出所:SIA/ Boston Consulting Group共同調査)

SIAの予測では、世界の半導体製造能力に占める米国の生産能力は、1990年には37%だったが、2019年には12%まで落ちており、2030年には10%にまで減少するとしている。SIAでは「グローバルな競合他社の政府によって提供された多額の補助金により、米国以外での生産能力が向上し続けてきた。また、そうした国々は独自の半導体能力を強化するための研究イニシアチブにも投資している。さらに、近年、世界的な半導体サプライチェーンの脆弱性が発生しており、チップ製造と研究への政府の投資を通じて対処する必要がある」と主張し、首都ワシントンD.C.でのロビー活動に力を入れている模様である。