インターステラテクノロジズ(IST)は7月31日、北海道・大樹町の射場にて観測ロケット「MOMO6号機」(名称:TENGAロケット)の打ち上げを実施した。ロケットは17:00に点火、約4分後に高度約92km(速報値)まで到達し、国内民間では初となるペイロードの放出と回収にも成功した。MOMOの打ち上げ成功は2機連続、合計で3回目。
ミッションは3つ全てに成功!
MOMOは、2019年5月の3号機で、初めて宇宙空間への到達に成功。しかし続く4号機、5号機と失敗が続いたことで、同社は全面的な改良を決定、1年間、打ち上げを中断してまで、信頼性の向上に取り組んできた。この成果となる新型機「MOMO v1」については、過去記事が詳しいのでそちらを参照して欲しい。
MOMO v1の初号機となる7号機は、7月3日に打ち上げて成功している。今回、2機連続でオンタイム打ち上げに成功したことで、信頼性の高さを最良の結果で実証した形だ。またMOMOとしては初めて1カ月以内に2機を打ち上げたことになり、射場設備も含め、高頻度運用への対応能力を示すことができたと言えるだろう。
今回打ち上げた6号機のミッションは、以下の3つだった。
- 1000人分の想い・願いをTENGA型メッセージPODに入れて宇宙に届ける
- TENGAロボがロケットに搭乗し、宇宙空間から地球へ帰還する
- 計測用のTENGAをロケットに搭載し、「宇宙用TENGA」の開発をスタートする
メッセージPOD(高さ64.8mm×直径37.8mm、重さ51.1g)とTENGAロボ(高さ78.2mm×直径34.8mm、重さ37.6g)は、頂点高度付近で射出。TENGAロボは海面に着水後、航空機でシーマーカー(海面着色剤)を確認し、船による回収にも成功した。計測用TENGAからのデータも受信できており、ミッションは3つとも無事完了している。
6号機では初めて、機体内部からのライブ中継も行われた。映像が大きく乱れることもなく、TENGAロボとメッセージPODが放出される瞬間を映し出し、エンジン停止後の自由落下状態では、“ゼロGインジケータ”のマスコットがプカプカと浮かぶ様子まで見ることができた。
2機連続成功が持つ大きな意味
MOMOにはこれまで、機体下部のエンジンが見える位置にカメラが搭載されていたが、今回はこれとは別に、ペイロードの中継用にシステムを用意。東京大学が大樹町内に所有する衛星管制用のパラボラアンテナを使用し、大容量の通信を実現したという。
ISTの稲川貴大代表取締役社長は、「ここは我々としてもチャレンジしたところ」とコメント。ペイロード内部を中継できるようになれば、広告PR・ブランディングのミッションでは様々な活用ができるし、科学実験でも映像で観察したいというニーズはあるだろう。今後のユーザー獲得において、今回成功した意味は大きいと言える。
また小型とはいえ、ペイロードの回収まで成功したことで、今後、様々な活用方法が見込まれる。稲川社長も、「データが入ったカードや、実験サンプルの回収にも使える」と期待。これ以上のサイズになると、フェアリング開頭など大きな技術開発が必要になるが、それは「タイミングを考えながら開発計画に入れるか決めていきたい」とした。
MOMO v1による2機連続成功は、非常に大きな成果だ。まず信頼性が大きく向上。さらに、ペイロードのライブ配信や回収まで可能になった。稲川社長は、「MOMOは本格的な商業利用へ移る」と宣言。「これまでの打ち上げを実験・実証する段階から、活用してもらう時代へ大きく変わる」と自信を見せた。
ただ1つ気になったのは、6号機の到達高度が約92kmと、7号機の約99kmからさらに下がったことだ。「何kmなら宇宙と言えるのか」は定義上の問題に過ぎず、組織によって100kmだったり50マイル(約80km)だったりするので、本質的な問題ではない。今回のように、高度があまり関係ないミッションの場合は、全く問題はないと言える。
しかしミッションによっては、もっと高度が必要になる場合もあるだろう。これについて、稲川社長は「すぐにできる細かな改良はいくつかあるが、それはミッション次第」とコメント。高高度のミッションとしては、たとえば電離層の観測などが考えられるが、具体的なニーズが見えてきた段階で改良計画を決めたいとした。
MOMOの安定的な運用にようやくめどが付いたことで、ISTは今後、開発リソースを全面的に超小型衛星用ロケット「ZERO」に投入することができる。同社の堀江貴文ファウンダーは、「MOMOをいつでも打ち上げられる状態をミニマムで維持しながら、ZEROの開発を本格化していきたい」と意気込みを述べた。