千葉大学は7月30日、多様な飲料における味覚(甘味、苦味、酸味、塩味)の強さについて、飲料の中身が見えない状態で容器の色が味覚にどのような影響を及ぼすかについて調べた結果、容器の色は飲料の特定の味を強調したり弱めたりする効果があることが明らかになったと発表した。

同成果は、千葉大 文学部の岡田和也大学生(2019年卒業)、千葉大大学院 人文科学研究院の一川誠教授らの研究チームによるもの。詳細は、日本視覚学会が刊行する学術誌「Vision」に掲載された。

ヒトは五感のうち視覚情報をもっとも頼りにしているが、その影響でほかの感覚が影響を受けてしまう場合がある。過去の研究からも、飲料の容器の色によってその飲料の味が変化する、つまり容器の色が味覚に影響を及ぼすということが報告されている。例えば、カフェオレを白色の容器から飲むと、青色や透明の容器で飲む場合よりも苦味が強く感じられるという具合だ。

しかし、これらの研究では特定の飲料のみが用いられており、容器の色による味覚への影響が、特定の飲料のみで生じるものか、ほかの飲料でも生じるものか不明だったという。また、飲料自体が直接見える状態で味覚の強さが評定されていたため、認められた効果が容器の色単独によって生じたものか、飲料自体の色と容器の色とのコントラストという相互作用によって生じたものかも不明であった。

そこで研究チームは今回、4通りの基本味(甘味、苦味、酸味、塩味)のいずれかが強い4通りの水溶液(ショ糖、塩化マグネシウム、クエン酸、食塩)を用い、容器の色(白、黒、赤、黄、青、緑、ピンク、茶)によって各基本味を感じる強さがどのように変動するかの調査を実施。調査では、円筒形の容器を各色の色画用紙で完全包装することで、飲料自体が見えないようにすることで、飲料自体の色が影響しないように工夫したとする。

  • 色と味の調和度

    実験で用いられた各色彩条件の容器。透明のペットボトルを色画用紙の筒で包装することで、水溶液が直接見えないようにされた (出所:千葉大プレスリリースPDF)

さらに、実験参加者は容器の色の影響を検討するため、開眼して何色であるかを見た場合とアイマスクをして閉眼した場合とで、ストローを使ってそれぞれの水溶液を口に含むこととされた。

そして、甘味、苦味、酸味、塩味の4通りの味すべてに対し、11段階で強度の評定を実施。閉眼条件で評価した味の強度を基準として、開眼条件で評価した味との差分を比べたほか、容器の色からイメージされる味と、飲料の実際の味が一致していると感じられる程度を「調和度」として、7段階評定が行われた。

その結果、飲料自体の色とは関係なく、容器の色は、基準と比較して、飲料の味を強める効果も弱める効果もあることが見出されたという。たとえば、黄色は酸味を、ピンク色は塩味を強め、緑色は甘味を弱めることなどが確認された。

  • 色と味の調和度

    各色彩条件と基準の差分のグラフ。基準での味覚強度を0とし、0を示す水平線より上側で味覚強調が、下側で味覚低減が示されている。誤差棒は95%信頼区間 (出所:千葉大プレスリリースPDF)

黄色と酸味との間の調和度は高く、緑色と甘味との間のそれは低かったことから、色と味との調和度が味覚強度の強調や低下に関わっていることが示唆されたという。ただし、ピンク色と塩味の間の調和度は中程度であったことから、色と味の調和度が、容器の色が味覚強度を強調する唯一の必要条件ではないことも示されたとしている。

  • 色と味の調和度

    各色彩条件での色と味の調和度を示したグラフ。正の値で調和、負の値で不調和が示されている。誤差棒は95%信頼区間 (出所:千葉大プレスリリースPDF)

今回行われた研究により、容器の色は、すべての飲料に対して同様に特定の味を強めたり弱めたりするのではなく、酸っぱい飲料を黄色の容器で飲んだ時には酸味を強く感じるというように、特定の飲料において特定の味の強度に影響を及ぼすことが示されたと研究チームでは説明しており、今後、この結果を用いることで、たとえば塩味を強調するピンク色の容器を使うと、少ない塩分で強い塩味を感じることができて減塩効果につながるなど、容器の色を利用した食生活改善にも応用が期待されるとしている。