九州大学(九大)は7月26日、アルマ望遠鏡を用いて星の誕生時におけるジェット(ガスの噴出現象)の回転を詳細に観測し、理論モデルと組み合わせた結果、ジェットの駆動機構とその役割を特定することに成功したと発表した。
同成果は、九大大学院 理学研究院の町田正博准教授、国立天文台の松下祐子研究員らの共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。
恒星が誕生する際、ジェットと呼ばれるガスの噴出現象が発生することが知られている。しかし、なぜジェットが発生するのかについては明確にはわかっていない。
共同研究チームは今回、原始星「FIR 6B」の周囲をアルマ望遠鏡で観測し、高速で回転しながら噴出するジェットを検出。このジェットは、回転の速度と角運動量がこれまで回転が検出されたジェットの中でも巨大で、観測史上最大級の回転を持つことが判明したという。
しかも、その回転速度と角運動量の大きさは、従来の理論予想をはるかに超えており、唯一説明できるモデルが「磁気駆動」のみだという。これにより、ジェットは磁場の効果によって出現するということが明らかとなったと研究チームでは説明する。
このジェットの回転は、原始星から半径3天文単位にある円盤の回転を、磁場の力ではるか遠方の100天文単位にある物質に伝え強制的に回転させることで初めて実現できるとする。
また、ジェットによって円盤のガスは回転(角運動量)を失って中心に落下し、原始星が大人の星に成長させる役割を果たすことも、今回の研究で明らかになったという。
このような超高速回転ジェットは、星が幼年期から大人の段階に移り変わる短い時間にだけ出現するが、今回の研究により、星の成長とジェットの関係を明らかにすることができたとしている。