中国の国立大学である北京大学は、「集成電路学院(日本名:集積回路学部、英名:School of Integrated Circuits)」の発足式を7月15日に執り行ったと発表した。
国家の要請に応えることを目的に、学科レベルだった集積回路に関する組織を独立した学部(School)レベルへと再編することを決め、集成電路学院の開校に至ったという。
同院の設立趣意書によると、「(1)学際的な勉強、(2)産業と教育の融合、(3)実践の重視を運営の3本柱とし、(1)マイクロ・ナノエレクトロニクス、(2)電子設計自動化(EDA)、(3)IC設計、(4)IC製造、(5)マイクロ・ナノシステムの集積という5つの重点分野に力を入れ、学際・複合型のIC人材を育成し、ICの基礎および応用研究レベルを引き上げ、中国国内のリーディングカンパニーと提携して、IC技術・産業の持続的発展を支援・推進する」ことを目指すとしている。
また、すでに集積電路学院が発足している清華大学とも協力を深めることで、中国の集積回路産業の人材育成を図っていくとしている。
さらに、式典後には、北京大学とSMIC、Huawei Technologies、Yangtze Memory Technologies(YMTC)、北華創科技、北京華大九天科技、Shanghai Well Semiconductorなどの企業との「集積回路人材の共同育成」の調印式も執り行われたという。
習近平国家主席の母校ではすでに集積回路学部が発足
今回の北京大学の動きよりも以前より、中国国内では複数の大学に集成電路学院が設置され、半導体集積回路の人材育成に本腰を入れるようになっている。
中国メディアの報道によると、2021年4月22日には、習近平 国家主席の母校である清華大学が「集積回路学院」を設置し、ナノ電子化学、IC設計方法と電子設計自動化(EDA)、IC設計・応用、IC部品・製造工法、MEMSと微小システム、パッケージングとシステムインテグレーション、半導体製造装置、半導体製造材料などの幅広い半導体専門分野の人材育成に向けた取り組みを開始したという。同大は、傘下に中国最大の半導体産業投資集団である清華紫光集団を所有しており、傘下にNAND専業のYMTCやシステムLSI(SoC)設計大手のUNISOCなどを有するなど、中国の半導体産業への人材供給の中核的役割を果たしている。
また、7月14日には、武漢市にある国立華中科技大学も「集積回路学院」を発足させたという。こちらは国家重要戦略と地域経済発展にサービスを提供することを目標とし、メモリ、センサ、光学チップ、ディスプレー、化合物半導体など特色ある専門分野の研究開発に注力するという。
なお、日本では、国内の半導体製造強化を経済産業省は模索している模様だが、大学教育・人材育成については文部科学省管轄のため、手が付けられていない状況であり、将来的な課題となることが予想される。