パナソニックは7月19日、オンラインによる記者会見を開き注力事業である「現場プロセスイノベーション」の国内戦略と、新たに発表したSaaS型業務アプリケーション群「現場最適化ソリューション」についての説明を行った。新ソリューションではAI(人工知能)を活用し、製造、物流、流通のサプライチェーン領域でシフト作成、入庫や仕分け、ピッキング、また在庫管理や品出しなどを効率化する。

記者会見に登壇したパナソニック コネクティッドソリューション社 上席副社長の片倉達夫氏は、「コロナ禍で流通や物流の現場においてさまざまな混乱が生じた。また、言語化できていない暗黙知が多く、現場の業務プロセスが定義できていない」と現状を説明し、「当社のインダストリアルエンジニアリング×デジタルトランスフォーメーションで、現場の課題を解決していく」と強調した。

  • パナソニック コネクティッドソリューション社 上席副社長の片倉達夫氏

パナソニックでは2018年より、注力事業として「現場プロセスイノベーション」を推進しサプライチェーンマネジメント(SCM)分野に注力している。2021年4月23日には、サプライチェーン・ソフトウェア大手の米Blue Yonder(ブルーヨンダー)を71億ドル(約8000億円)で買収した。

パナソニックの製造業100年のノウハウやインダストリアルエンジニアリング(IE)、現場のデータを取得する各種エッジデバイスや画像センシングといった技術と、ブルーヨンダーのAIを活用したソフトウェアプラットフォームを組み合わせ、需要・供給の変化をリアルタイムに把握し、現場作業の最適化や省人化を図る「オートノマスサプライチェーン(自律的な現場)」の実現を目指している。

同事業の国内推進体制に関しても、2019年の発表では総勢470名だったが、今回、約6倍の約3000名に増員し体制を強化した。また、リカーリング(継続収益)比率についても拡大を目指す。2021年のリカーリング比率は販売、利益でそれぞれ20%、40%であるが、2030年までにはそれぞれ、30%、60%まで拡大させる方針だ。

  • 「現場プロセスイノベーション」事業の国内推進体制

片倉氏は、「欧米では日本とは異なり、デジタルに合わせて全体の業務プロセスを設定するといった取り組みが先行している。しかし、センシング技術をはじめとした当社の技術は、欧米においても生かせるものだ。ブルーヨンダーの3000を超える顧客企業を中心に戦略を立てて進めていきたい」と、海外進出への展望も語った。

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今回、新たに発表された「現場最適化ソリューション」は、製造、物流、流通のサプライチェーン領域でシフト作成、入庫や仕分け、ピッキング、また在庫管理や品出しなどの各工程の業務を連携し効率化する。各々のアプリケーションを組み合わせて使うことで、最終的にはサプライチェーン現場のエンド・ツー・エンドの工程を総合的に可視化、最適化できるアプリケーション群だ。

具体的には、現場の課題をネットワークカメラなどのエッジデバイスを通じてタイムリーに可視化し、コンサルタントが分析を行い業務プロセスの標準・基準値を決める。標準値に比べて長い作業時間、工数、滞留時間などのムダを割り出し、ギャップを取り除いた上でAIがアシストする新たな計画に基づき最適な業務プロセスを実行することで、現場の業務効率化を可能にするとしている。

  • 物流における「現場最適化ソリューション」を利用した最適化イメージ

例えば、物流現場で輸配送最適化アプリケーションにより荷量の予測を立てられることで、荷量と荷物の届く日時を把握でき、その情報をシフト最適化アプリケーションに共有することで庫内作業や荷物の積み込み作業に必要な人のシフト計画が立てられる。

そのシフト計画で最適化された積み込み作業と同期した輸送計画を立てることができ、輸配送最適化アプリケーションで最適ルートをアシストし、さらに運行実績を配送見える化アプリケーションで自動で取得し、さらなる輸配送オペレーションの進化を実現することができるという。

物流分野で7つ、流通分野で8つのアプリケーション群があり、個別に利用することも各アプリケーションを連携させて利用することも可能だ。月額利用料は、登録人数、拠点数、カメラ台数、ライセンス数によって異なり、ユーザーの要望に合わせて提示するとのこと。

  • 現場最適化ソリューションのアプリケーション群

パナソニック自社においても「現場最適化ソリューション」を含む「現場プロセスイノベーション」を導入している。8万品番以上の部品を在庫として保管し、月に2万6000件の出荷に対応しているというパナソニック彩都パーツセンター(大阪茨木市)では、「現場プロセスイノベーション」により、ピッキング工数を年率25%向上させ、コストを10.8%削減、分析工数は600分から15分に短縮しているという。

  • パナソニック彩都パーツセンターでの導入実績

同社は今後、各々のアプリケーションから入ってくる情報をデータレイク(ビッグデータを多様な形式で保持する中央ストレージリポジトリ)に集約することを検討している。

  • 物流におけるデータレイクを通じたデータ連携の構想

データレイクの情報をダッシュボード化し各業務プロセスを一元管理することで、いつどこにどの程度の量の荷物が届くという情報をデータレイクを通じてシフト最適化アプリケーションに自動連携でき、効率の良い人の配置計画をシームレスに作成するといったことも可能になるとしている。

「現場をデジタル技術で最適化し、『待つ』、『迷う』といった現場の非付加価値作業を減らしていく」(片倉氏)