NECは7月19日、自社が運営する企業スポーツチーム「NEC グリーンロケッツ東葛」(ラグビー)と「NEC レッドロケッツ」(女子バレーボール)について、地域連携の強化とビジネス化に向けた改革の方針を発表した。
企業スポーツに対する自社の新しいビジョンとして、「スポーツとテクノロジーを掛け合わせることによって企業スポーツを改革 人々の生活をより豊かにすることを目指す」を掲げ、今後は地域コミュニティと連携しながら、NECのテクノロジーを活用して、強いチームづくりと自立運営による興行収益の最大化をねらう。
「ホストタウン・ホームタウンでのイベント開催など地元の活性化、次世代の選手の育成を行うアカデミーの創設などを通じて、地域社会に貢献するチーム運営を進める。また、スポーツビジネスとしての収益の最大化とともにスポーツを軸としたビジネス展開を推進し、全てのステークホルダーのさらなる価値向上を目指したい」と、NEC 執行役員常務の松木俊哉氏は意気込む。
これまで、NECは従業員の福利厚生、士気高揚、社内の一体感の醸成を主目的に企業スポーツチームを運営してきた。だが、2018 年のバレーボールVリーグ自主興行制の開始や、2022年1月開幕予定の自主興行を前提としたラグビー新リーグ発足など、企業が自らスポーツ興行を主催できる土壌が整ったことを契機に、同社はスポーツに取り組む方針・戦略を変え、企業スポーツの新しい在り方の形成を目指そうとしている。
新たな方針の下での企業スポーツチーム運営とスポーツビジネスの推進は、新設の「スポーツビジネス推進本部」が中心となって行う。チームメンバーは約14名で、マーケティングを中心に、スポーツチーム運営に携わっていた人事・総務、オリンピック・パラリンピック関連業務の担当者など、NECのスポーツ関連業務に従事してきたスタッフで構成される。
同部を率いる本部長には、プロバスケットボールチームの「千葉ジェッツふなばし」創設者であり、Jリーグ加盟の「アビスパ福岡」の社長代行を務めるなど、スポーツチーム経営の経験が豊富な梶原健氏が招聘された。
ビジネス化に向けては、「チーム強化」「地域コミュニティの活性化」「収益性の向上」を3本柱としており、それぞれの柱でNEC のテクノロジーを活用する予定だ。現状は、「チーム強化」と「収益性の向上」での施策が明らかにされている。
「チーム強化」の領域では、スポーツの指導方法(メソッド)をデジタル化するコーチングメソッド管理がある。この他、ウェアラブルデバイスから収集したデータや血液を基にAIで選手のコンディションデータを分析するコンディションチェック、映像を活用したパフォーマス分析など、最先端の練習・サポート環境を整備する。
梶原氏はコーチングメソッドの活用について、「例えば、従来は紙で管理をしていたコーチのノウハウをプラットフォーム化して、それを基にどの選手も好きな時に練習を組んだり、日ごろの練習を管理できたりする仕組みを導入したい。トップチームの強化を図ることはもちろん、そうしたデータ管理は次世代の育成にも活用していきたい」と語った。
「収益性の向上」にあたっては、VRやARを活用した新しい観戦スタイルの提供、顔認証を活用した高セキュリティな試合運営など、安全・安心でエンターテイメント性豊かなホームゲーム開催を目指す。さらに、映像やSNSを活用したコミュニケーション基盤の構築など、ホームゲーム以外でもファンとチームが365日、双方向につながることができる環境づくりを行う。
ビジネスとしての黒字化の目標やチームの法人化について、松木氏は「収益化、黒字化は最大の目標だが、達成までの期限は設けていない。ただ、今まで100%、企業の持ち出しだった部分に収益が加わるので、ハイブリッドな事業として、会社、そして社員を一つにまとめる存在として2チームのバリューを高めたい。また、将来的にこの事業を法人化して切り出すということは選択肢の一つとして考えている。具体的な時期は想定していないが、一つのターゲットとして取り組んでいきたい」と明かした。