見た目の美しいゴキブリの新種を沖縄県の宮古島で発見し「ベニエリルリゴキブリ」と命名した、と鹿児島大学などの研究グループが発表した。絶滅の危機にひんしているとみられ、種の保存法の「緊急指定種」に指定された。ゴキブリが法的に保護されるのは国内初という。ゴキブリは人間に嫌われがちだが実は害虫は一部で、研究グループは「美しい種がいることも知ってほしい」という。

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    ベニエリルリゴキブリのオス(柳沢静磨氏撮影、坂巻祥孝・鹿児島大学准教授提供)

宮古島では1990年代頃から、前羽の付け根に赤みを帯びた黄色の微毛、中央部に同じ色あいの帯状の紋様を持つ独特の美しいゴキブリがまれに見つかっていたという。既知の種とは特徴が異なり、研究グループはDNA解析の結果も踏まえ「ルリゴキブリ属」の新種と結論づけた。学名はユーコリディア・ミヤコエンシス。オスの全長は12.5~13ミリ。宮古島でのみ見つかっている。

国内のルリゴキブリ属は、沖縄県の石垣島と西表島に生息する「ルリゴキブリ」の1種のみが知られていた。昨年11月、研究グループが鹿児島県の奄美大島など4島に分布する「アカボシルリゴキブリ」、沖縄県の与那国島にのみ生息する「ウスオビルリゴキブリ」の発見を発表。今回の1種を加え、国内は4種となった。

今回のベニエリルリゴキブリは宮古島でも生息できる環境が非常に限られ、絶滅の危機にひんしているとみられる。野生のルリゴキブリ類はオークションでの取引もあり、新種として注目を集めると種の存続に悪影響となりかねない。そこでウスオビルリゴキブリとともに、種の保存法の緊急指定種として今月1日から3年間、捕獲や殺傷、販売などが禁止されることになった。

ゴキブリは国内ではクロゴキブリ、チャバネゴキブリなどが人家でも見かける害虫として広く知られる。病原菌を運び、ふんや死骸がアレルゲンとなるほか、見た目の不快感などのため忌避されている。ただ研究グループによると、南西諸島から東南アジア、南アジアにかけて分布するルリゴキブリ属は、いずれも美しい青い光沢や、鮮やかなだいだい色の紋などを持つ「美麗種」。人家に入らず、森林の朽ち木の中などで“大人しく”暮らしている。国内に分布するゴキブリ62種のうち人家に定着しているのは6種で、残りは人間とほとんど関わらないという。

研究グループの鹿児島大学農学部の坂巻祥孝准教授(害虫学)は「ゴキブリも生態系の1ピースであり、森林では分解者として重要。保護が必要と考えられる種には、たとえ人間が嫌うものであろうと適切に対応すべきだ。今回の発表により、多くの方に先入観なく自然を理解し、生き物を保護することへの関心を持ってほしい」と述べている。

研究グループは磐田市竜洋昆虫自然観察公園(静岡県)、国立科学博物館、鹿児島大学、法政大学で構成。成果は日本動物分類学会の学会誌「スピーシーズダイバーシティー」に6月17日に掲載され、鹿児島大学などが7月5日に発表した。

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    ベニエリルリゴキブリ(左)とウスオビルリゴキブリ。いずれもオス(柳沢静磨氏撮影、坂巻祥孝・鹿児島大学准教授提供)

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