世界規模で車載向けを中心に28nmプロセスの半導体が不足する中、TSMCは28nmプロセスの生産能力を拡大することを目的に、台湾や中国(南京)での増産を決めているが、さらに独ドレスデンや日本の熊本での生産に向け、各国地方自治体とファブ建設について話し合いを重ねているとのうわさレベルの話としながら、台湾の経済日報が報じている。経済日報では、7月12日付けの誌面にてTSMCは、これらのうわさに応えるため、7月15日になんらかの発表を行う予定であり、それまで沈黙を保つと述べたとも報じている。
台湾の半導体業界関係者によると、世界的な半導体不足は7nmや5nmといった最先端の微細プロセスではなく、主として生産拡大を後回しにしてきたそれ以上の成熟プロセスで生じており、TSMCでも自動車用チップ、CMOSイメージセンサ(CIS)、ドライバIC、通信チップ、RFチップといった分野の顧客ニーズを満たすために、すでに枯れた28nmプロセスの生産能力を積極的に拡大することを計画しているという。具体的には、今後2〜3年で28nmプロセスの総生産能力は月産で10万〜15万枚増加すると見込まれているという。
すでにTSMCは2021年4月に、中国・南京工場に28億ドルを投じて28nmを中心としたレガシープロセスの生産能力を拡張させる計画を打ち出し、不足する車載半導体の生産を行うことを予定している。2022年下半期に生産能力の拡充がなされ、2023年半ばまでに月産4万枚の体制を構築する見通しだが、この動きに対し、米国政府がTSMCに、南京工場(Fab16)の生産能力を拡張しないよう圧力をかけていると米国の一部メディアが報じている。TSMCは、市場のうわさにはコメントしないとしているが、もし7月15日に28nmプロセスの製造拠点の再編に関して何らかのアナウンスを行うのであれば、この件に関しても何らかの言及がでる可能性があると台湾の市場関係者は期待を示しているという。
なお、日本とドイツの新工場は、車載半導体やCMOSイメージセンサなどの各国の顧客ニーズを満たすことを目的に、28nmプロセスで月産3万枚程度のファブになるのではないかと、台湾ではうわさされている。