東京上野の国立科学博物館(科博)は、人気漫画「ドラえもん」の登場人物「のび太」にちなみ「エウブロンテス・ノビタイ(ノビタイ)」と名付けられた、中国の四川省で発見された新種の肉食恐竜の足跡化石のレプリカを2021年11月30日~12月12日にかけて一般公開することを発表した。
エウブロンテス・ノビタイの命名者は中国地質大学のXing Lida(シン・リーター、邢立达)准教授で、子供のころから「ドラえもん」ファンで、2020年の「映画ドラえもん のび太の新恐竜」の中で、のび太が新種の恐竜に自分の名前をつけるシーンがあったことから、のび太の夢を叶えたいと思い、「のび太」に人名を示すラテン語の接尾辞「i」(イ)をつけてノビタイと命名したという。
シン准教授と科博は、研究交流があったことから、ノビタイの足跡1点のレプリカが寄贈されることになり、レプリカの公開と足跡化石とその研究についての企画展を開催する事となったという。
ノビタイの足跡化石は、2020年7月の四川省での集中豪雨の後、板状の岩石上に発見された4歩の足跡化石で、中型で足裏が幅広、第2趾の指の付け根の痕跡が明瞭であることなどからエウブロンテス属に分類されたが、エウブロンテス属のこれまで報告されている種よりも、第2趾と第4趾の左右の開きが大きいこと、中央の指(中指)がやや外側に向いていることなどから、新種として命名された。
足裏の長さ(約30センチメートル)から、ノビタイは全長4メートルくらいの肉食恐竜で、足跡は今から約1億2500万年(白亜紀前期)前、現在の中国・四川省金魚渓(成都より南に約310km)の地面に残されたものだという。化石に残された歩幅から約時速4kmで歩いていたものと推定される。
エウブロンテスはもともとアメリカのコネチカット州で発見されたジュラ紀の肉食恐竜の足跡につけられた学名で、エウ(真の)+ブロンテス(地響き、雷)という意味で、二足歩行で、3本の指先には鋭いカギツメの痕があるため、肉食恐竜だということがわかっている。中国でもこれまでにもエウブロンテスが報告されているが、ノビタイは5種目、白亜紀(約1億4500万年前〜6600万年前)からは初のエウブロンテスの報告となるという。
科博の真鍋真 副館長は「中生代の日本はアジア大陸の一部だったので、ノビタイは日本にも生息していたかもしれない。ノビタイは肉食恐竜の足跡なので、のび太が喜んでくれるのではないかと思う。ノビタイの姿を想像したり、体の化石を探したくなったりするなど、これをきっかけに恐竜や足跡化石の研究者が育ってくれたら嬉しい。また、足跡化石は骨格化石と比べると目立たないが、今回のように歩幅から時速などの推定ができる。ノビタイをきっかけに足跡化石にも注目していただけたら」とコメントを寄せた。
なお、同一般公開の概要ならびに注意事項は以下の通りとなっている。
- 会場:国立科学博物館 地球館1階(東京都台東区上野公園7-20)
- 入館料:一般・大学生は630円(団体510円)、高校生以下および65歳以上は無料 ※同展は常設展示入館料のみで閲覧が可能
- 入館の際には、ホームページでの事前予約が必須