パナソニック システムソリューションズ ジャパン(パナソニック)は7月8日、同社の「現場センシングソリューション」における画像センシング技術に関するセミナーをメディア向けに実施した。

画像センシング技術とは、カメラの情報をもとに視覚的に対象・事象を特定する技術のこと。例えば、工場内に設定された危険エリアに人が気づかずに侵入したとする。それをネットワークカメラが検知し、画像処理を行って視覚的に分かりやすい画像データに変換し、監視ルームに表示させるといった、従業員の生産性向上や事故防止につながる技術だ。

  • 画像センシング技術とは?

    画像センシング技術とは?

パナソニックは、1981年に画像センシング技術の研究開発を開始しており、センシング技術を体系的に提供するセンシングソリューション事業を2020年に立ち上げた。同事業ではセンシング技術はもちろん、顔認証技術や高性能のエッジデバイスを組み合わせたソリューションを展開している。

これまでに、センシング技術を活用して、医療機関・薬局向けの顔認証付きカードリーダーや、顔認証技術を活用した鍵管理サービスといったサービス展開や、東京ドームでの顔認証入場・顔認証決済の実証実験など、さまざまな取り組みを実施してきた。

同セミナーに登壇したパナソニック システムソリューションズ ジャパン スマートセンシング事業センター長の新妻孝文氏は、「われわれはお客様やパートナー企業様と共に、多様な現場の課題に寄り添い、現場プロセスイノベーションの実現を目指していきたい」と、同事業の目的を語った。そして同氏は、「現場センシングソリューション」における最新の画像センシング技術を3つ紹介した。

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10分かかる棚卸し作業を1分に短縮

1つ目は、物流現場の棚卸し業務で活用できる物体認識技術。ディープラーニング技術とネットワークカメラの制御を組み合わせ、荷物の2次元コードを高速に認識する技術だ。

一般的に棚卸し業務は、スマートフォンなどのようなハンディターミナルを用いて行う。手作業で2次元のバーコードを一つひとつスキャンするため、多くの手間とコストがかかっている。また時間帯によって現場の明るさが変化したり、荷物の向きや大きさが不ぞろいであったりなど、さまざまな事象が発生する。

  • 物体認識技術で棚卸し業務を効率化

パナソニックの物体認識技術を活用した棚卸しでは、まずカメラのレンズ制御で広角撮影を行い、無造作に積まれた大小さまざまな複数のラベルの位置を検知し記憶する。そして、ラベル位置から自動計算したカメラの旋回角度やズームを繰り返して2次元コードを読み取る。暗い場所や光で反射する2次元コードも、カメラの明暗制御で正確に読み取ることができるという。

  • 物体認識 デモンストレーションの様子

  • 結果画面。すべてのコードを確認できている

しかし、荷物を運んでいる段階で荷物同士が擦れることで、ラベルに傷が入り2次元コード読み取れない場合もある。そうした場合は、ラベルの位置は検知できているので、読み取れなかった2次元コードとしてその位置に反映し、作業員がすぐに不備に気づけるようにする。

  • 汚れのある2次元コードのラベル

  • 結果画面。1つだけ検知できなかったことを表示

同社によると同技術を活用することにより、10分費やしていた読み取り作業を1分に短縮できるという。同技術を活用した実証実験が複数の物流現場で完了しているといい、2021年度の納入に向けて準備を進めている。

密度だけでなく群衆速度まで可視化

2つ目は、人密集度や人流を可視化する技術。イベント会場などの警備上の安全を確保するために群衆の密集度を可視化する技術だ。

従来のモデルでは検出ベースを利用しており、人を等身大で認識することでそのエリアの密集度を計測していた。しかしこの処理は負荷が大きく、人と人との重なりにより隠れてしまう部分が生じてしまい、密集度の精度が低かった。また、フェンス越しの物体や雨の日の傘を人の頭部と誤認してしまうなど、さまざまな課題があったという。

対する新しくなった密度推定モデルでは、人を等身大ではなく頭部だけで認識する。これにより、画像処理の負荷を軽減するだけでなく、部分隠ぺいも少なくなり、広範囲で認識して正しく密集度を計測することが可能になる。

  • 人密集度や人流を可視化する技術

また新モデルでは、群衆の動きベクトルを抽出できるようになり、群衆の大きさや移動速度をリアルタイムで可視化することを実現している。さらに、独自の学習やアルゴリズムで外乱(フェンスや傘など)に強いセンシングを実現している。

新妻氏は「今後、現場センシングソリューションのサービスの拡充や展開を加速させるとともに、企業とのパートナー連携も視野に入れる」と目標を語り、セミナーを締めくくった。