三井不動産は7月8日、同社初の新築賃貸ラボ施設で、2019年より手掛けてきた賃貸ラボ&オフィス事業「三井のラボ&オフィス」の都心近接型第二弾で新築物件第一号となる「三井リンクラボ新木場1」がオープンしたことを発表した。
三井不動産は、日本橋の街づくりのコンセプトとして、ライフサイエンス企業の集積を1つのテーマとして抱え、ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)と協力し、ライフサイエンス領域での「新産業創造」のエコシステムを構築することを目指してきた。
近年、ライフサイエンス分野の研究環境は、特に米国では、郊外型から都心へと回帰が進んでいること、また自社保有の施設ではなく、賃貸を活用する形で広い床面積を確保していること、そしてパートナーとの協業による研究開発の加速といったものトレンドとなっているという。
こうした動きを受け、日本でも都心近接型の賃貸型ウェットラボを利用したいというニーズが上昇。三井不動産では、そうしたニーズに応えるために、「三井のラボ&オフィス」事業を開始し、自社の新たなアセットクラスとして展開していくことを決めたという。
同社では、製薬企業が集中する日本橋に、大学や公的研究機関、スタートアップベンチャーを集約することを目指すライフサイエンスビルシリーズを展開してきたが、三井のラボ&オフィスはもう1つの場の整備に向けた取り組みとなる。
三井のラボ&オフィスの特徴は、研究者が液体や気体を用いて実際に研究を行う賃貸ウェットラボと、デスクワークなどを行うオフィススペースをセットとして利用できる施設を提供するというもの。通常のオフィスビルと異なり、ウェットラボ特有の給排水・給排気といった設備が当初より整備されていることが売りの1つとなっている。
このコンセプトは2つ。1つは「都心近接型」で、もう1つが「シーズ近接型」である。都心近接型では、都心の近接地に拠点を用意することでアカデミア、病院、製薬企業や異業種やキープレイヤーとコラボレーションを加速させようというもの。シーズ近接型は、大学や研究施設、先端医療施設などの近接地に拠点を用意することで、先進的な研究開発を加速させようというものとなっている。
2021年7月時点で三井のラボ&オフィスは、都心近接型として2021年1月に竣工した「三井リンクラボ葛西」が稼働済みであったが、今回、新たに「三井リンクラボ新木場1」が2021年3月に竣工し、稼働を開始したことが明らかとされた。
三井リンクラボ新木場1は6階建てで、敷地面積は3300.06m2、延べ床面積は11169.77m2で、総貸付面積は7867.25m2となっており、バイオセーフティレベル(BSL)2に対応したウェットラボを構築することが可能となっている。
これを実現するために、貸室の各区間ごとに設備バルコニーを用意。専用の専用の給排水、給排気、都市ガスなどを直接配管することを可能とする仕組みを採用することで、研究内容に応じた柔軟な使い方が可能となっているという。
すでに一部の企業が入居済みだという。
なお、三井不動産では、新木場に第2弾の拠点を建設するための計画を進めており、すでに設置場所を選定を終えており、2023年春ころの竣工を目指して作業を進めるとしている。この新木場エリア2棟目となる施設の敷地面積は約9000m2、延べ床面積は約1万8000m2と、新木場1よりも広くなる予定だという。また、シーズ近接型として、千葉県柏市の柏の葉に「三井リンクラボ柏の葉」が2021年11月に竣工する予定だともしている。このほか、ライフサイエンス分野の研究開発が旺盛で成熟した市場を形成している米ボストン市への進出に向けた「イノベーションスクエアPhase II」を2021年中に竣工させる予定ともしている。