SAPジャパンは7月6日、オムニチャネル・カスタマー・エンゲージメント・プラットフォーム「SAP Emarsys Customer Engagement」を提供開始したと発表した。

SAP Emarsys Customer Engagementは、消費財および小売業界を主な対象としており、今回、2021年11月に買収したEmarsysの製品をSAP Customer Experienceのポートフォリオに組み込んだ形となる。

バイスプレジデント SAP Customer Experience 事業本部長 富田裕史氏は、SAP Customer Experienceは「顧客データ」「コマース」「マーケティング」「販売」「サービス」というジャンルから構成され、各ジャンルに関連したソリューションがひもづいていると説明した。Emarsysのソリューションはマーケティングに分類される。

  • SAPジャパン バイスプレジデント SAP Customer Experience 事業本部長 富田裕史氏

  • SAP Customer Experienceの製品ポートフォリオ

続けて、富田氏は同社のCX(カスタマーエクスペリエンス)に関する戦略について、説明した。具体的には、「SAP Commerce Cloud」「SAP Customer Data Platform」「Emarsys」という3つのソリューションを用いて、あらゆるコマースとカスタマデータ戦略の加速を目指す。

富田氏は「フロントだけのコマースをカバーするツールはCXを提供することはできない。だから、われわれは顧客のタッチポイントをすべてコマース化する」と、同社の独自性をアピールした。

  • SAPのCXに関する戦略

そして、富田氏は日本のマーケティングオートメーション市場には、「実行までに時間がかかる」「ROIが不明瞭」という課題があるが、SAP Emarsys Customer Engagementでは、実行の時間短縮とROIにこだわった機能を備えていると述べた。

まず、SAP Emarsys Customer Engagementは1週間から10日程度で設定を完了し、データ投入を行うだけで利用を開始することができる。データ量によっては、早ければ1カ月程度で本番稼働を開始することも可能だという。

また、Tactics機能として、マーケティングキャンペーンを実行するために必要なシナリオが事前定義されたユースケースが30以上用意されている。これらユースケースを選択し、ドラッグ&ドロップで事前に定義されたシナリオの調整を行うことで、1日で実行することも可能だという。

通常、マーケティングキャンペーン実行時には、対象の顧客セグメントの決定、シナリオの考案およびシステム上での設定、メールコンテンツの作成など一連のプロセスに数カ月要すると言われており、SAP Emarsys Customer Engagementによりマーケティングキャンペーンの時間を短縮できる。

  • 「SAP Emarsys Customer Engagement」のTactics機能の画面

さらに、「SAP Emarsys Customer Engagement」にはマーケッターがすぐに利用可能なKPIが事前セットされている。マーケッターのリソースや知識が乏しい場合も、事前に定義されたKPIの状況を確認し、KPIを上げるためのTacticsを選択することで、KPIの改善を図ることが可能だという。

また、キャンペーンを適用した後に、AIで収益の改善予測を行い、分析ダッシュボードで表示することで、一般的には数値化しづらい広告効果なども含めて、ROIを可視化して表示することができる。これにより、マーケッターによる事業への貢献度も明確に示すことができるという。

富田氏は、こうした機能により、マーケティング人材の不足もカバーできると語っていた。

  • 「SAP Emarsys Customer Engagement」のダッシュボード