キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は7月1日、法人向けエンドポイントセキュリティのラインアップを刷新し、包括的な対策を実現する「ESET PROTECTソリューション」と、Microsoft 365向けのクラウドセキュリティサービス「ESET Cloud Office Security」を同日から提供するとオンライン会見で発表した。
包括的な対策を実現する新ソリューション
まず、新ソリューションを説明したキヤノンマーケティングジャパン セキュリティソリューション企画本部 セキュリティソリューション商品企画部 部長の輿水直貴氏は「ESETのコアテクノロジーは多層防御であり、エンドポイントをさまざまな脅威から防御している」と話す。
従来のESETが提供するエンドポイントセキュリティは基本ソフトウェアを軸に、顧客ニーズに合わせてEDRやエンドポイントのクラウド管理、HDD暗号化による情報漏えい対策など必要な各種対策をオプションで提供していた。
ただ、コロナ禍でエンドポイントの社外利用(社内、在宅、サテライトオフィスなど)により、働く環境が急激に変化し、エンドポイントを取り巻くリスクが拡大・深刻化しており、セキュリティの対象は境界からエンドポイントに変化しているため、重要性が増しているという。
そのため、輿水氏は「エンドポイントを多重で防御し、統合管理するとともにクラウド利用へのニーズに対応することが肝要だ。そこで、多様な対策を包括的に提供するESET PROTECT(ESETのクライアント管理ツールの名称)ソリューションにラインアップを刷新した」と説明する。
マルウェア対策などの基本的な対策に加え、クラウドサンドボックス、デバイス紛失・盗難時の情報漏えい対策など、保護する対象や規模のニーズに合わせて多重防御を行い、包括的な対策を実現するESET PROTECTソリューションを新たに展開する。
同氏は「コアテクノロジーも進化し、クラウドボックスを活用したエンドポイント多層防御を実現する」と話す。これはESETのテクノロジーで100%白黒判定できない不審なファイルをクラウドに自動送信し、機械学習、サンドボックスなど多段階に解析するほか、クラウドサンドボックスを活用することで標的型攻撃やゼロデイ攻撃に用いられる従来の手法では検出しにくい未知のマルウェアの解析を可能としている。また、解析は数分で完了し、悪質な場合は全端末にフィードバックされ、自動防御するという。
さらに、クラウド型セキュリティ管理ツール「ESET PROTECT Cloud」は、社内外問わずにエンドポイントをセキュアに管理し、サーバ構築・保守不要で早期導入・運用開始とコスト低減を実現。加えて、自動バージョンアップで常に最新の環境を利用可能なほか、多様なデバイスにまたがる多重の対策を1コンソールで管理を可能としている。
共通の管理ツールにより、運用負荷を低減しながらクライアント端末の一元管理を可能とし、端末の検出エンジンの更新やウイルス検査の実施、端末ログやレポート情報の取得、ユーザー管理や、各種セキュリティ対策の運用管理などを一元的に行い、個々の端末を適正な状態に保つことを可能としている。
そのほか、オンプレミス管理に加え、新たにクラウド管理に標準対応し、初期費用を抑えながら導入までの時間を短縮し、サーバ構築やメンテナンスなどの負荷を低減することに加え、管理者と利用者いずれもリモート環境にある場合もクラウドでの管理ができるという。
ユーザーの環境変化に合わせて、中堅・大企業向け(100人以上)に「ESET PROTECT Advanced クラウド」、Microsoft 365向けのクラウドセキュリティサービスであるESET Cloud Office Securityを含めた「同 Complete クラウド」、「同 Advanced オンプレミス」、「同 Essential Plus オンプレミス」の4製品となる。
中小企業向け(99人以下)は「ESET PROTECT Entry クラウド」、「同 Essential クラウド」、オンプレミス版は既存の「ESET Endpoint Protection Advanced」と「ESET Endpoint Protection Standard」を、それぞれ「ESET PROTECT Entry オンプレミス」「同 Essential オンプレミス」に刷新する。
一方、Microsoft 365向けのクラウドセキュリティサービスであるESET Cloud Office Securityは、Microsoft 365のセキュリティを強化するクラウドサービス。オンラインコラボレーションツールを利用して共有するファイルや送受信するメールのマルウェア対策、スパムメール対策、フィッシング対策を行い、脅威から保護する。
テレワーク環境下において利用が進むクラウドアプリケーション上でのファイル共有やメール送受信を安全するとしている。輿水氏は「新たなソリューションを提供することで現在のシェアは3位だが、2年以内に2位を目指す」と意気込みを語っていた。
キヤノンMJのセキュリティソリューション事業
セキュリティソリューション事業の方向性に関して、キヤノンマーケティングジャパン セキュリティソリューション企画本部 本部長の山本昇氏は「企業を取り巻く経営環境はコロナ対策や従来からの働き方改革などでテレワークの拡大に加え、DXを加速させるためにデジタル化・クラウド化が急速に進んだ1年だった。便利になった一方でセキュリティリスクは高まり、サステナビリティやSDGs、コンプライアンスをはじめ企業の社会的責任も増加している」との認識を示す。
同氏は、IDC Japanの調査結果を引き合いに出し、コロナ禍においてはテレワークを含む働き方改革やセキュリティ強化への対応を最優先に進めており、コロナ後はサプライチェーンの強化や業界再編への対応(M&Aなど)をはじめとした分野への投資を検討している企業が多いという。
また、クラウド/オンプレミスにおけるセキュリティの脅威はマルウェア感染であり、企業ではIDaaS(Identity as a Service)やCASB(Cloud Access Security Broker)など認証系のソリューションにフォーカスし、ゼロトラスト型のセキュリティに着目している。
こうした状況を背景に同社のセキュリティ事業は、ESETやFortinet、GUARDIANWALLをはじめとしたセキュリティのツール・サービスを展開。山本氏は「当社のセキュリティ事業は製品・サービスを販売するだけでなく、グループ全体でデジタルセキュリティで顧客のビジネス変革を支えることを主眼としている。研究開発力、サポート力、商品力を強みにゼロトラスト型のセキュリティ支援に向けたサービスを提供する」と強調。
同社の中長期計画ではITソリューションにシフトし、セキュリティ事業は中小集権企業を中心に大手企業までをターゲットに2023年度に380億円を目指しており、セキュリティ事業の方向性として「従来のモノ売り(売切ビジネス)から、オンライアン販売やSaaS、MSS(Managed Security Service)やSOC(Security Operation Center)をはじめとした高度セキュリティサービスといったコト売り(サービスビジネス)へビジネスモデルを変革」を掲げている。
最後に山本氏は「当社はESETの国内総販売代理店であり、6月末で日本市場に参入してから18年を迎える。キヤノンMJの強みと、ESETの技術力による強みを掛け合わせて製品を提供してきた自負があるため、今後も新ソリューションを中心に顧客のセキュリティレベルを担保していく」と力を込めていた。