半導体・電子部品のオンライン販売事業を手掛けるコアスタッフは6月30日、世界的な半導体供給不足に関して、半導体商社である同社を取り巻く現状についての説明会を開催した。

同社は、通常のアウトセールスによる営業と自社在庫10万点、その他他社在庫600万点の「コアスタッフオンライン」を中心とするオンライン販売の両輪で半導体や電子部品を販売する半導体商社。近年では、半導体メーカーなどの工場から在庫を預かり、コアスタッフが在庫として抱えてコアスタッフオンライン上で販売を行う委託販売を開始したほか、海外の販売網を活用した緊急調達への対応なども行っているという。

受注金額がうなぎのぼりの2021年上半期

コロナ禍にあって、半導体不足がささやかれるようになった2020年後半、同社の受注金額も増加をはじめ、2021年2月後半から一気に急増。2021年4月、5月と高いレベルを維持しており、同社代表取締役社長の戸澤正紀氏は「6月の最新データとしては、さらに上昇しており、個人的な見解だが、6月がピークだと見ている」とする。しかも、この受注金額の伸びはオンラインのみならず、リアルでの取引でも伸びており、業界全体で活況を呈している状況だとする。

  • コアスタッフ

    コアスタッフの2020年1月から2021年5月までの受注金額の推移。会見が6月最終日に開催されたことから6月のデータはないが、速報値としては4月、5月を超える状況だという。ただし、7月、8月にかけては盆休みなどがある関係から若干落ち着きを取り戻し、9月以降はユーザー側のマインドに、入手できないなら作らない、というあきらめがでてきて、踊り場を迎えるのではないかとの見方を示している

戸澤氏は、あくまで個人的な見解としながらも、こうした動きの背景には、新型コロナによって落ち込んだ車載半導体を中心とする需要が一気に戻ってきた一方で、巣籠需要が予想以上に高止まりが続いていること、そしてそこに輪をかけて日本の半導体工場で発生した火災や、米国テキサス州を襲った寒波の影響による半導体工場の操業停止や、化学プラントの停止による樹脂関連の供給ストップの影響があるとする。

では、この需要の高止まりは一時的なものかというと、それについても「現在、世界的に新型コロナワクチンの接種が進められており、それに伴い、経済の活性化が期待されることから、需要がさらに高まる可能性がある」ともしている。

半導体のみならず、電子部品関連全体の需要が増加

また、こうした需要の伸びは半導体のみならず、コネクタなどの電子部品関連も伸びているという。特にコネクタに関しては、2020年初頭比で4倍程度まで需要が増大しているという。

  • コアスタッフ

    半導体の受注が伸びると、必然的に周辺部品に対する需要も伸びることとなる

ちなみに受注を国・地域別で見た場合、中国と米国の回復が顕著で、圧倒的な高まりを見せているという。また、需給バランスが崩れ、需要が急増した結果、半導体価格が急騰しており、特に入手困難なメーカーの製品の場合、メーカーが受注残についても値上げを実施することもある状況とのことで、在庫調達をしようとしても納期が1年後と言われることも出てきたという。そうすると、すでに市場で流通している在庫から調達しようという動きがでてくるが、流通在庫の貴重なものだと、通常価格と比べ、場合によっては20倍や30倍といった価格で取引されることもあるという。

  • コアスタッフ

    新型コロナワクチンの接種が進む米国と中国からの受注が主なけん引役になっているという

さらに、問題となっているのが、急激な需要の増加により、商社として在庫は抱えているものの、捌き切れずに物流に関する機能不全が生じているほか、そうした品を運ぶ配送会社もさばききれなくなっており、納期の遅延に拍車をかけているという。

物流の混乱を避けるためにDX化を推進

同社も物流の混乱を避けるべく、人員の増加を図っているが、なかなか人が集まらない状況だという。そのため、「必然的にデジタルトランスフォーメーション(DX)化を進めざるを得ない状況となった」と戸澤氏は同社の現状を説明する。

具体的には、これまで人がやっていた作業を機械にやらせるというもので、従来であればコストの問題があったが、現在の状況を鑑みると、作業スピードが人に比べて遅くても、稼働率を上昇させることを優先することを決断。ロボットによるピッキング作業から着荷、カウント、ラベル張りまでの流れをロボットによって自動化できる仕組みを構築したという。戸澤氏は、「2022年には新物流センターを現在の物流センター(長野県佐久市)の近いところに立ち上げる予定で、今回の自動化の仕組みはわずか1年程度の稼働となるが、現在の状況を考えれば 、やる価値はあると思っている」と今回の取り組みについて語る。

  • コアスタッフ

    長野県佐久市にある物流センターが導入したDXの概要。人手を介していた部分を機械に任せることで、常時稼働を可能とした

新物流センターは、従来物流センターの4倍近い延床面積を持たせる予定のため、人による作業が大変だということで、自動倉庫型ピッキングシステムなどの導入を予定している。また、新物流センターが稼働した後、既存の物流センターは当初は閉鎖する予定であったが、最近ではBCPの観点からそれなりの出荷機能を持たせ、第2倉庫的な位置づけとすることも検討しているとする。

  • コアスタッフ

    新物流センターの概要

「コロナ禍において業界に変化が生じ、在庫保有や短納期への対応などといった物流ニーズと人員不足なども含め、顧客要望は物流ニーズに変わってきた。商社の立場でも、物流の付加価値が高まってきている」と、半導体商社を取り巻く状況の変化を表現。コロナ禍における半導体商社の存在意義が問われるようになってきたとしており、本当の意味で顧客のニーズに真正面から向き合い、本気で1:1でのサポートをすることで顧客の課題を解決することが活路につながるとし、これまで進めてきたアナログとデジタルという両輪でのビジネスを今後も強化していくことで、さらなる事業の拡大を図っていきたいとしている。

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    コアスタッフ代表取締役社長の戸澤正紀氏