島津製作所は、排尿前後の体重差から排尿量を測定するシステム「Urina(ユリーナ)」の発売を7月1日より開始することを発表した。

持っている技術を掛け合わせることでイノベーションにつなげる

同システムは、社内のコア技術や新技術を用い、事業化を推進する部門として2020年10月に中央技術部門に新設された組織である「スタートアップインキュベーションセンター」による第一弾製品だという。

同センターの新規事業化を推進する仕組みは、オープンイノベーションなどで得られた新事業の企画、事業規模、実現性などを審議し、製品開発を行い、事業を開発、一定年数の事業の成長を見て事業部門の新設や事業会社の設立、撤退などを決めていくというものだ。

新規事業というと、新企画や新技術が必要と考えがちだが、それらはローンチまでに時間とコストを要する。

そこで、同社は“すでにある事業を組み合わせること”で短期間で新製品をローンチすることを考え、同社の売り上げの中でもトップクラスにある分析計測機器の天秤の技術と、2番目の売り上げ規模である医用機器の技術を組み合わせてUrinaの製品化に至ったとした。

排尿量測定システムUrina

尿量の測定は、入院病棟で行われており、患者の体調管理、術後の効果、異常の把握のために行われている。

その際、尿の飛び散りや容器洗浄に起因する感染リスクが懸念されていることや、容器が使い捨ての場合は、感染性廃棄物としての処理の煩雑さや消耗品コストも課題になっていたという。また、採尿が必要ない、トイレ一体型の測定装置は存在するが、トイレそのものを入れ替える必要があるため、設置が困難なことが課題だったという。

Urinaは、患者の排尿前後のわずかな体重変化から排尿量を測定できるため、採尿行為が不要となり、感染リスクの低減や、容器の洗浄作業、コストを削減につながるほか、体重計のように持ち運べる装置のため、設置が簡単なことが特徴だと同社は説明する。

  • ユリーナ本体と患者用端末

    Urina本体と患者用端末(出所:島津製作所)

また、同システムは排尿時刻や量を自動的に記録・集計する機能があるため、医療従事者の負担を軽減につながるとしている。

同製品は、排尿量計および医師用端末と患者用端末で構成され、販売希望価格は70万3000円としている。

2024年3月までに1500台の販売および同年4月以降の海外展開を目指すとしている。