アドビは6月29日、今年の4月12日付で代表取締役社長に就任した神谷知信(かみや とものぶ)氏が、同社の国内の事業戦略を説明した。
神谷氏は、「コロナになってからデジタルが中心になってきている。紙ベースのものをデジタル化したいということで、Document Cloudの市場が大きく成長している。デジタルが生活や仕事の中心になっており、Eコマース市場も一段と拡大していくとみている。日本市場では、紙からデジタル・自動化へのシフトが一番進展した分野だと思っている。紙の仕事をデジタルにしないとリモードワークを実現できない。ただ、このトレンドは始まりであり、これからより加速していくとみている」と、Document Cloud市場に期待を寄せた。
そして、日本市場のビジョンとして「心、おどる、デジタル」を掲げた。
「われわれは、デジタルによって最高の体験を提供したい。デジタルでワクワクする世界をアドビが作っていきたい」(神谷氏)
「心、おどる、デジタル」のビジョンに向けては、Digitalize、Delight、Amaze、Fosterの4つの柱で進めていくという。
「Digitalizeでは紙をデジタル化するだけでなく、承認も含めてすべてのプロセスをデジタル化することで、ペーパーレスが実現できる。Delightでは、データを活用することで、お客様とOne on Oneでつながる最高のデジタル体験を実現する。Amazeは、クリエイティブで常識を動かし、創造性のある社会の実現に貢献していきたい。きちんと使ってもらえるためにAIであるAdobe Senseiの機能を拡充していく。Fosterでは、誰でも使えるデジタル環境を作っていきたい。次世代のデジタルリテラシーの育成を支援していきたい」(神谷氏)
そのために、テクノロジー、エコシステム、人材と組織の3つで施策を実行するという。
テクノロジーでは、Adobe Creative Cloud、Adobe Document Cloud、Adobe Experience Cloudの3つのクラウドを連携させて、データを分析して最適なコンテンツを提供するとした。
GTM・市場開発部ビジネスデベロップメントマネージャー 阿部成行氏は、最適なコンテンツとは、正しいコンテンツを、正しいヒトに、正しいタイミングで正しいチャネルによって提供することだとし、同氏は「コンテンツの世界はAIを使って、それぞれのタイミングでコンテンツを生成して提供するContent Intelligeの世界にシフトしている。コンバージョンへと至る体験の特徴を理解・測定し、そのインサイトに基づいてコンテンツをパーソナライズ・最適化していく。アドビがもっとも強みを発揮できるのが、コンテンツ生成だ」と語った。
エコシステムでは、対外的なアドバイザリーボードとして、「Adobe International Advisory Board」を3月に設立した。これは、DXに取り組む企業を支援するためのグローバル顧問評議会だという。このコミュニティでは、経営陣に向けアドバイスする。また、ユーザーコミュニティからフィードバックをもらっており、今後も製品に反映させていくという。
「アドビの力はコミュニティだと考えている。コミュニティのみなさんと寄り添って、良い製品を提供し、心、おどる、デジタルを実現していきたいと考えている」(神谷氏)
人材と組織では、SMB、エンタープライズ、教育/政府の3つの市場に対し、専門性を持つ顧客支援チームを組織し、専門営業部門とCSM(Customer SuccessManager:顧客の導入支とトレーニングを行う)部門を新たに設立し、規模や業態にあったサービスを拡充していくという。同様にパートナーもSMB、エンタープライズ、教育/政府の3つの市場に対し、得意/不得意を考え、最適なパートナーと組んでサービスを提供していくという。
また、顧客のDXの戦略・方針の策定段階から一緒に支援していコンサルティングサービスを強化するという。
神谷氏は、「アドビジャパンはコンサルティングとトレーニングサービスの力を入れていく。それによって、心、おどる、デジタルを実現できる」と語った。