立教大学と東日本電信電話(NTT東日本)は6月29日、VR空間上で講義を行うバーチャルキャンパスの実現に向けた実証実験を7月から開始するとして、相互協力協定を締結し記者発表会を開催した。

  • バーチャルキャンパスでの講義の様子イメージ

今回の取り組みは、AI、3DCG、VR技術を活用して、実在感と臨場感があるバーチャルキャンパスの構築を目指すもの。立教大学が研究および開発を進めている、バーチャル空間上のAI搭載ロボット(Virtual Droid)、高精度3Dモデル作成技術、AIを活用したリアルなVRと、NTT東日本が提供するセキュアかつ高速処理を可能とするネットワークを組み合わせて、VR空間上での円滑なコミュニケーションを実現する。

  • 自身の姿を反映させた3Dアバターを作成し、VR空間上に投影できる

新型コロナウイルス感染症の流行を受け、多くの大学でオンラインによる講義が導入された。しかし、講義からでも学びは得られる一方で、実際のキャンパス内で生み出される学生同士の人間関係や、講義以外の場面で醸成されるさまざまなコミュニケーション、共同でのワークの不足が課題になっているという。

こうした背景から両者は、AI技術と高精度3Dモデルにを活用した実在感と臨場感があるバーチャルキャンパスの実現を目指すに至ったとのこと。バーチャルキャンパス内では、学生および教職員が自身を模したリアルな3Dアバターを操作し、VR空間上に表現された臨場感のある仮想教室内で講義を実施する。既存のオンライン会議システムを用いた授業と比較して、骨格のモデルなど三次元での構造を把握する際に特に有用だという。

  • VR用のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着し、VR空間上で講義に参加できる

将来的には幅広い社会課題の解決に向け、観光や芸術、農業など他分野への応用も考えているという。さらに自治体や民間企業、各種団体等とも協業の幅を広げ、介護福祉分野での社会課題など幅広い社会課題の解決に向けた共同検討を進めていく。

立教大学 大学院人工知能科学研究科 研究科委員長 内山泰伸氏は会見の中で「既存のシステムを使用したオンライン講義では、カメラを切った学生の反応がわからずに、授業の進行が難しかった。アバターを活用してボディランゲージまでVR空間上に表現できれば、従来以上に円滑なやり取りができる。現実の代替ではなく、むしろ新しいコミュニケーションになり得る」とコメントした。

また、NTT東日本 東京事業部 東京北支店長 北島隆玄氏は「多くの大学で学生がキャンパスに来ることができない課題に対し、ICTで解決策を提案していきたい。コロナ禍ではあるがキャンパスライフならではの体験と、バーチャルならではの体験も提供したい」と述べた。

  • 立教大学 大学院人工知能科学研究科 研究科委員長 内山泰伸氏(左)、NTT東日本 東京事業部 東京北支店長 北島隆玄氏(右)