リガクと日本電子は6月29日、共同開発を行った電子回析統合プラットフォーム「Synergy-ED」の記者勉強会を開催した。
同製品は、電子顕微鏡や単結晶構造解析の専門的知識が無くとも扱うことができる、極微結晶(数10~数100nm)の「単結晶構造解析」を可能とした電子回析プラットフォームだと両社は説明する。
新薬開発や材料開発分野では、3次元構造を精密に可視化できることや、新規物質の分子の立体構造を直接可視化することができることから、単結晶構造解析は必須の技術とされてきたという。
従来用いられてきたのは「X線単結晶構造解析」で、結晶にX線をあて、フーリエ変換により結像し、3次元の分子構造を観察することができる手法だ。
しかし、この手法には課題があり、単結晶が必須のため結晶化が困難な物質は解析が難しく、原理上1μmを下回るサイズの結晶が解析できないとされてきた。
そこで、リガクと日本電子は、X線の代わりに電子線を用いることで、理論上X線の1000分の1程度である数10~数100nmの結晶サイズを解析可能にする「Synergy-ED」を開発。
同製品は、日本電子が持つ透過型電子顕微鏡の技術をベースに開発した「電子線回折計」と、リガクが持つHyPiX検出器の技術をベースに開発した「検出器」、測定から解析までを行うことができるソフトウェア「CRYSALIS PRO ED」を組み合わせたもので、測定だけでなく、構造解析までをシームレスに行うことができるソリューションだとしている。
解析の手順は、サンプルホルダをSynergy-EDにセットし、測定パーティクルを指定、電子回析データを取得し、構造解析を自動か手動で行うと分子の3次元構造を可視化できるというものだ。
複雑な手順ではないため、単結晶構造解析の専門的知識を有していなくても利用できる点が同製品の特色だと両社は説明した。
ターゲットは大学や製薬会社、受託分析会社だといい、リガクの神田氏は「アカデミアの分野であれば、MOF(有機金属構造体)やCOF(共有結合性有機構造体)の解析に需要があり、製薬分野では新規物質だけでなく、結晶多形の探索にも活用ができる点で注目されている」と同製品の活用分野について説明した。
同製品は、6月1日からすでに販売を開始しており、国内のみならず北米、欧州にも展開を行っているという。