FOOD & LIFE COMPANIES 上席執行役員(経営企画・財務経理・情報システム管掌) 小河博嗣氏

回転すし店「スシロー」を展開するFOOD & LIFE COMPANIESは今年5月、2021年9月期第2四半期決算を発表、売上収益1190億4200万円(前年同期比10.1%増)、営業利益131億1400万円(59.2%増)を達成し、売上・利益とも過去最高を記録した。

コロナ禍で苦しむ飲食店が多い中、同社が好調な背景には何があるのか。今回、スシローブランドを持つFOOD & LIFE COMPANIES 上席執行役員(経営企画・財務経理・情報システム管掌)の小河博嗣氏に、コロナ禍におけるスシローの取り組みについて聞いた。

デジタル技術で店舗における対面接客を低減

新型コロナウイルスの感染の影響で、ここ1年外食を控えている人は多いだろう。そうした中、すこしでも安心して店舗で食事ができるよう、スシローは非接触のサービスを拡大するとともに、テイクアウトなどの新たなニーズに応えている。

その要となるがデジタル技術だ。例えば、一部の店舗では、来店客が専用システムで受付を行う自動案内システムが、席を案内してくれる。待ち時間が発生する場合は、モニターに番号を表示して、順番が来たら知らせる。食事が終わったら、支払いを行う必要があるが、セルフレジを利用することができる。つまり、入店から支払いまで、ほぼ店舗のスタッフと触れ合うことなく、食事を済ませることができる。

  • 自動案内システムで発行されたQRコードをかざすと、座席を案内してくれる

  • スシローのセルフレジ。現金のほか、QRコード決済にも対応している

また、スシローではテイクアウトも行っているが、「自動土産ロッカー」を利用すれば、指定した時間に店舗に行き、注文時に発行されるQRコードをかざすだけで商品を受け取ることができる。注文はインターネット、店内、電話、FAXで受け付けている。

  • 注文した際に発行されるQRコードをかざすと、注文したすしを取り出すことができる「自動土産ロッカー」

加えて、スマホアプリであらかじめ予約を行っておけば、待ち時間をなくすとともに店舗のスタッフと接することなく、入店できる。アプリでは、テイクアウトの予約も行える。

小河氏によると、スマホアプリをリニューアルしようとしていたところ、新型コロナウイルスが発生したのだという。もともと、アプリでテイクアウトの受付を行っていたが、誘導は積極的に行っていなかった。そのため、「すぐにできることは何かということで、テイクアウトのボタンと色を変えて、目立たせるようにしたところ、テイクアウトが増えました。システムで対応しようとすると時間がかかりますが、すぐにやれることもあるはずです」と小河氏はいう。

「おいしくて安い」を実現するためにムダを徹底排除

前述したように、現在、スシローの店舗ではほぼ非接触ですしを食べることができる。しかし、小河氏は「創業者の理念である『おいしくて安い』を実現するため、ムダをそぎおとした結果、非接触が実現しています」と語る。新型コロナの感染対策を目的に、非接触のためのサービスを導入しているのではないということだ。

そもそも、回転すしはレーンですしを回すことで、すしをテーブルに運ぶことに伴う省人化と効率化を図っている。また、スシローでは原価を管理するため、皿にICチップを埋め込み、何がどれだけ売れているかを可視化している。小河氏は「われわれは、今でいうところのIoTを以前から取り入れていたということになります」は語る。スシローがITのトレンドを先取りしており、世の中が後からついてきているともいえる。

また、小河氏は「人がやらなくても、おいしいが成立するトランザクションはITにまかせてもかまわないわけです。これを実行したことで、省人化が実現し、コロナ禍では非接触となりました」と話す。「自動土産ロッカー」も、利用客が少しでも早く購入ができるよう、サービス向上を目的として設置した結果、コロナ禍の非接触対応に役立っている。

一方、小河氏は「店舗で非接触を徹底すると、それはそれで寂しいものです。今こそ、外食の存在意義が問われています。コロナ禍でも店舗に足を運んでくださるお客さまに、少しでも食事を楽しんでいただきたいと思っています」と話す。テイクアウトでもすしを食べることができるところ、来店してくれる利用客に外食ならではの楽しさを味わってもらいたいという。

そこで、活気のある音楽とともに、その日のおススメ商品を店内放送で流しているそうだ。「人が接しなくても、外食の楽しい雰囲気作りはできます」と、小河氏は語っていた。