農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は、6月23日にトヨタ自動車(トヨタ)と共同でサトウキビの難病である黒穂病(くろほびょう)の抵抗性品種を選抜・育成できるDNA(デオキシリボ核酸)マーカーを開発したと発表した。

このDNAマーカーを活用することで、「抵抗性個体であるサトウキビ品種を効率的に選抜することが可能になる」という。

日本や海外のサトウキビ栽培地では、黒穂病が一度発生すると、これに対する有効な薬剤がないために、現在は厳重に廃棄処理するしか手立てがなく、サトウキビを原料にした砂糖製造事業の運営の大きな課題になっている。

開発したDNAマーカーを活用すると、黒穂病抵抗性を持つサトウキビ個体を的確に選抜することができるようになり、黒穂病発生を防ぐ有効な対策として期待ができる。

今回開発したDNAマーカーは、トヨタが2016年に開発したゲノム解析技術「GRAS=D技術」を基に農研機構とトヨタの共同で開発を続けてきたものだという。

黒穂病抵抗性に優れている飼料用サトウキビ品種「やえのうしえ」に対して、染色体上の遺伝子やDNAマーカーの相対的な位置関係を示した地図である連鎖地図を作成し、黒穂病抵抗性の遺伝解析を行った結果、下記図のように「黒穂病抵抗性に関わる遺伝領域が第8連鎖群にあること」を確認したという。

  • 飼料用サトウキビ品種「やえのうしえ」の連鎖地図

    飼料用サトウキビ品種「やえのうしえ」の連鎖地図(引用:農研機構の資料)

その結果「この第8連鎖群を活用することで黒穂病抵抗性に強い品種選抜法を見出し、黒穂病抵抗性の個体を選抜できるDNAマーカーの開発にメドをつけることができた」と農研機構は説明する。

また、「ゲノム構造が複雑なサトウキビでも、再現性高くゲノムを一律にカバーできる遺伝子情報の取得が可能な点に大きな意味がある」と説明している。