米国連邦議会上院の超党派グループは6月17日(米国時間)、米国内の半導体製造の拡大を促進するために半導体製造分野への投資に対する25%の税額控除制度を新設する法案である「米国製半導体促進法(Facilitating American-Built Semiconductors(FABS) Act」を提案した。

提案者は、上院財政委員会のロン・ワイデン委員長(民主党:Intel開発試作拠点のあるオレゴン州選出)とマイク・クレイポ上院議員(共和党:Micron Technologyの本拠地であるアイダホ州選出)で、ほかに4名の超党派議員が賛同者として名を連ねている。

提案した上院議員らは「世界の半導体生産に米国内での生産が占めるシェアは1990年の37%から現在は12%に低下してしまっている。半導体の生産はますます海外に集中しており、世界の75%が現在、東アジアで生産されている。新型コロナウイルスのパンデミックにより、自動車工場の操業休止をもたらすような半導体不足が顕著になり、半導体サプライチェーンの強化や多様化などの見直しが必要性が明らかになった。半導体を米国内で生産する場合と海外で生産する際に生じるコスト差の最大70%が外国政府の補助金によるものである。外国政府が半導体企業の生産拠点を誘致し続けることで、米国経済のリスクが高まり、米国人労働者から高収入の仕事が外国勢に奪われることを容認してはならない」と主張している。

CHIPS法を補完する投資減税法案となるFABS

米国連邦議会は、米国の将来に半導体が果たす重要な役割を認識し、2021年1月、2021年度国防授権法(NDAA)の一部として包括的なCHIPS for America Act(Creating Helpful Incentives to Produce Semiconductors for America Act:米国内での半導体製造を促進するために役立つインセンティブを創設する法律)を制定した。同法は、国内の半導体製造と半導体研究へ投資に対するインセンティブを承認したが、これを実現するためには資金や優遇策を提供することを具体的に定めた別の法律が必要となり、米上院は6月8日、中国との技術競争に備える包括的な対中法案ともいえる米国イノベーション競争法(USICA)を賛成多数で可決している。

USICAには、CHIPS for America Actの半導体製造、設計、および研究条項に資金を提供するための520億ドルの予算が含まれている。今回の半導体投資税額控除のためのFABSは、Chips for Americaの下でUSICAを補完するための投資減税という重要な役割がある。

SIAのCEOがFABS議会提案に賛意を表明

今回の動きを受けて、SIAの社長兼最高経営責任者(CEO)であるジョン・ヌーファ氏は、「米国の半導体製造とイノベーションを促進するには、助成金、税額控除、研究投資の組み合わせが必要である。SIAは、議会の指導者に半導体製造と研究のための投資税額控除を制定するようかねてから呼びかけてきた。今回、ワイデン上院議員らがFABS法の議会提案に主導権を握ったことに賛意を表明する。米国の雇用創出、国防、インフラストラクチャ、半導体サプライチェーンに不可欠な国内の半導体チップ生産と研究を強化するために連邦議会とバイデン政権と協力していきたい」と述べている。