スリーエム ジャパンは、3Mが実施している科学に対する意識調査「State of Science Index(ステート・オブ・サイエンス・インデックス:SOSI)」の2021年版の調査結果を発表した。
2021年は、日本を含む17か国の18歳以上の成人、各国約1,000人を対象として調査を実施。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が拡大する状況下で実施された調査としては2回目となった。
調査は2018年から1年に1回行われているが、2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック前である2019年8月~10月間とパンデミック期の2020年7月~8月間の2回にわたり調査が行われた。
2021年の調査では、科学に対する信頼性が向上し、科学やSTEM分野への期待が高まる一方で、STEM分野の職種に就くハードルが高いこと、STEM分野における多様性の推進やジェンダー格差の解消、日本ではSTEM分野の教育が重要課題として挙がったという。
科学に対する信頼度が向上、懐疑的な意識を持つ割合は減少という結果に
調査項目としての科学への信頼度については、調査開始以降、年々向上をし続けており、最新版の調査ではグローバルでは回答者の91%が科学を信頼しており、85%が「科学が重視されなければ、社会に悪影響が出る」と回答。
また75%が「科学を疑問視する人がいれば、科学を擁護する」とも回答したという。さらに、科学に対して懐疑的な意識を持つ人の割合はこれまでで最も低い27%となったという。 日本においても科学を信頼すると回答した人は84%に上り、「科学が重視されなければ、社会に悪影響が出る」と考える人が75%となったという。
また、日本で「日常生活で科学は非常に重要な役割を担っている」と回答した人の割合は38%と、調査国平均である56%を下回ったが、2018年の初回調査の15%と比較すると2倍以上の数値となったとするほか、科学に対する懐疑的な意識を持つ人も20%と、2020年のパンデミック前調査からは12ポイントの減少となったという。
パンデミックで高まる科学への期待
パンデミックにおける科学への期待の調査項目では、日本における調査で88%の人が「COVID-19の感染拡大を防ぐためには科学者のアドバイスに従うべきだ」と考えており、73%の人が、「周囲のほとんどの人が科学的知見に基づき行動している」と回答。また87%の人が、「公衆衛生上の問題に科学が立ち向かうためには、ワクチンが不可欠」と考えているという結果となったという。
また、日本では70%がパンデミック後も科学を重視する傾向が続くと回答したが、グローバルでは59%という結果となった。
STEM分野で活躍する人材が必要も、そのキャリアには魅力を感じないという相反する結果も
パンデミックで科学への信頼度や期待が高まるのにつれ、STEM分野への関心も高まっている。
日本では、多くの人がSTEM分野で働く人材が必要であると認識しており、今回の結果では、88%が「STEM分野のキャリアを目指す人材を増やす必要がある」と回答し(グローバル90%)、78%の回答者は「STEM分野のキャリアを積む人材が増えることで自国の経済が良くなる」(グローバル84%)と回答したという。
一方で、「若い世代が科学や科学関連の問題に非常に高い関心を持っている」と回答した人の割合は、グローバルの平均の69%に対し、日本は調査対象国の中で最も低い41%という結果だった。
また、「パンデミック下で、科学者や医療従事者は若い世代が将来STEM分野のキャリアを追求するきっかけになったと思う」と感じている人も43%にとどまり、調査対象国の中でも低い数値となったという(グローバル62%)。
そのほか、「今回のパンデミックを機にSTEM分野のキャリアを選択したい」と回答した人も35%に留まり(グローバル 60%)、STEM分野で活躍する人材が必要との声が上がる一方、自らはSTEM分野のキャリアに魅力を感じないという結果となったという。
多くの人がSTEM人材の多様性とSTEM教育の充実を望む結果に
グローバルでは回答者の60%が「パンデミックをきっかけに、STEM分野のキャリアに進むこと」を考えるようになり、世代別ではZ世代(同調査ではは18~24歳が対象)で64%、ミレニアル世代は65%がSTEM分野のキャリアに進むことを考えるようになったと回答したという。また、90%の回答者が「より多くの人びとがSTEM分野の職種に就く必要がある」と回答した。
一方で、STEM分野のキャリアへの入り口が狭いことも課題視されており、88%の回答者が「STEM分野で多様性を推進することが不可欠」と回答しており、73%の回答者が「社会的少数者がSTEM教育を受ける機会を享受できていない」と感じていることが明らかになったという。
ジェンダーの格差も乗り越えるべき課題であることが明らかになっており、70%の回答者が「科学分野で活躍する女性が増えなければ社会に悪影響が及ぶ」、87%が「女性のSTEM教育の門戸を広げるためにはより一層の努力が必要」、59%が「STEM分野において女性は男性よりもより多くの足かせがある」と回答した。
STEM分野の教育に関しては、「STEM分野に従事する教育者が不十分である(日本64%、グローバル52%)」、「学校でSTEM関連の授業が少ない(日本63%、グローバル54%)」、「学業以外にやらなければいけないこと(就労、家事や家族の世話)が多く、STEM分野について考える余裕がない(日本59%、グローバル41%)」ことを理由に、STEM教育を受ける際のハードルがあると感じている人も多くいるという結果となったという。
また、日本ではSTEM分野におけるジェンダー格差について、女性が直面するSTEM分野での不公平感を解消するために、性別にかかわらずより多くの取り組みを行う必要があると考えている人が多いという結果となった。
そのほか、環境問題への意識や持続可能な世界の実現のために必要だと考えていることなどのトピックがあり、各国の結果、比較などが日本語版と英語版で公開されている。