半導体製造装置メーカーであるオーストリアEV Groupは、ステップ&リピート・ナノインプリント・リソグラフィ(NIL)の新製品としてマスタースタンプ製造用「EVG 770 NT」を発表した。

同装置、ウェハレベル・オプティクス(WLO)、および高精度のラボ・オン・チップデバイス(マイクロ流体デバイス)、拡張現実(AR)ウェーブガイドなどの量産で使用される大面積マスタースタンプの製造を精緻な転写によって可能にしたものだという。

高いオーバーレイ精度と分解能を兼ね備えることで、パフォーマンス、生産性、そしてプロセスの制御性を高めることに成功。量産向け装置として、80mm×80mmサイズまでのシングルレンズ/ダイテンプレートを最大300mmウェハまたは第2世代(G2:370mm×470mm)のパネルサイズまで継ぎ目なしで複製可能であり、アラインメント精度は250nm以下で分解能は50nm以下としている。

今回、大面積基板上に大きなマスターモールドを複製することを可能にしたことで、継ぎ目なしにこれまでよりも大きなデバイスの製造が可能になる。このため、レーザー/電子ビーム直描(EB)方式など、スループットが低く実装コストが高いために大きな基板にスケールアップすることが難しかった従来のマスター製作プロセスと比較して、歩留まりと製造コストに大きなメリットをもたらすと同社では説明している。

なお、「NILを半導体製造の微細プロセスへ適用する可能性はあるのか」と同社に確認してみたところ、同社からは「EVGは、NILを適用することが最適なマイクロ光学やフォトニクス市場に焦点を当てている。この技術は、バイオメディカル、デイスプレイや電子産業でも活用することができる。しかし、分解能や重ね合わせ精度の点で、半導体で超微細化を目指すEUV露光技術と競合することは考えてはいない。NILは、そのような超微細化を目指すのとは異なるさまざまな要求にこたえるための選択肢を広げる技術ととらえている」との回答を得ている。ナノインプリントを半導体製造に向けた超微細なプロセスとして活用することを目指して研究を進めているグループなどもいるが、分解能、アラインメント精度、異物微粒子による欠陥密度などの点で微細化になればなるほど適用が困難になっており、EVGでも半導体とは異なるデバイスへの適用を目指しているという。

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    EVGのステップ&リピート・ナノインプリント・リソグラフィ装置「EVG 770 NT」の外観 (画像提供:EVG)

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    「EVG 770 NT」で製作された大面積マスタスタンプの例(直径3.5mmの微小レンズ) (画像提供:EVG)