市場調査会社である富士経済は6月10日、パワー半導体市場の現状と将来展望に関する調査結果を発表した。

それによると、シリコンパワー半導体の2020年の売上高は前年比4.0%減の2兆7529億円であったが、2030年には2020年比で38%増の3兆7981億円になるとしている。また、SiC、GaN、そしてGa2O3といった次世代パワー半導体の2020年売上高前年比9.6%増の514億円で、2030年には2020年比4.8倍の2490億円と予測しており、これらを合算した2030年の市場規模は2020年比44.3%増の4兆471億円になるとしている。

2020年のシリコンパワー半導体市場はサーバ電源向けなど情報通信機器分野がテレワークの普及などで好調だったが、産業機器や自動車・電装分野の落ち込みが大きくマイナス成長となった。また、地域別で見た場合、日本、北米、欧州、中国を除くアジアはマイナス成長となったものの、中国は2020年後半には需要が回復・増加したという。2021年以降は自動車電装化の進展、5G通信関連への投資増加、産業分野での需要回復により、市場拡大が予想されている。

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    パワー半導体市場の予測 (出所:富士経済)

急速に市場を拡大するSiCパワー半導体

SiCパワー半導体の2020年売上高は、前年比110%増の493億円となったという。これが2030年には2020年比3.8倍の1859億円規模に成長する見込みと富士経済では予測しているが、シリコンパワー半導体市場の5%にも満たないことに注意が必要である。

今後のけん引役としては自動車のエレクトロニクス化に伴い、DC-DCコンバータやオンボードチャージャ、インバータモジュールなどにおける需要が伸びることが期待されるとしている。

また、エリア別では、テスラの電気自動車(EV)向けが多いことため、北米の比率が高いが、それ以外の自動車メーカーによる採用も予定されているため、今後は欧州などでの市場が拡大されていく見通しだという。

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    SiCパワー半導体市場の予測 (出所:富士経済)

自動車・電装分野での採用で市場拡大が期待されるGaN

GaNパワー半導体の2020年売上高は、前年比116%増の22億円であったが、これが2030年には2020年比7.5倍の166億円となる見込みだという。

2020年は、ACアダプタ需要に加え、サーバ電源など情報通信機器分野でも好調であったという。今後もデータセンターや5Gの普及に伴う携帯電話基地局の需要増加などにより市場成長が期待されるとするほか、2022年以降は自動車・電装分野での採用進展も期待されるという。

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    GaNパワー半導体市場の予測 (出所:富士経済)

また、現在は研究開発が進められている酸化ガリウム(Ga2O3)パワー半導体市場は2030年に465億円規模というGaNパワー半導体以上の市場が形成されることが期待されるという。

SiCやGaNと比較し、高耐圧・低損失など性能面で優れ、低コスト化が可能であることから、以前から早期の実用化が期待されているものの、また量産には至っていないGa2O3。まずは600Vの中耐圧領域から参入し、いずれ民生機器分野での採用が想定されるが、車載での採用は可能だとしてもだいぶ先になるとみられる。

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    Ga2O3パワー半導体市場の予測 (出所:富士経済)